日本心臓血管外科学会雑誌
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26 巻, 6 号
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  • Magnetic resonance angiography の有用性
    阿部 正一, 酒井 章, 小寺 孝治郎, 須藤 恭一, 大澤 幹夫
    1997 年 26 巻 6 号 p. 349-353
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心大血管手術における脳合併症の対策として, 成人待機手術41例, 年齢30~76歳 (63.9±9.7歳) に magnetic resonance angiography (MRA) を用いた潜在的脳血管病変の術前検索を行い, その有用性と本法の適応について検討した. 結果は主幹動脈病変7例 (17.1%), びまん性脳動脈硬化性病変6例 (14.6%), 椎骨動脈病変5例 (12.2%), 脳動脈瘤2例 (4.9%), 年齢相応変化11例 (26.8%), 無所見10例 (24.4%) であった. 70歳以上の12例中8例に有意病変を認めた. 脳血管事故の既往を有した6例は全例有意病変があり, うち3例が先行脳外科手術の適応となった. 40例に対して予定手術を行い, 有意所見例に対しては原則として拍動流体外循環を用いた. 脳動脈瘤2例, 内頸動脈病変3例に対しては先行して当院の脳外科において手術を行った. 術後脳合併症は小脳梗塞の1例 (2.5%) であった. 著明な全汎性脳動脈硬化性病変のために弓部大動脈瘤の1例は手術を回避した. 術前MRAの検討は侵襲もなく有用な術前検査であり, その適応は70歳以上高齢者, 脳血管事故の既往歴に加え60歳以上の動脈硬化性疾患と考える.
  • 宇藤 純一, 後藤 平明, 平田 智美, 國友 隆二, 原 正彦, 北村 信夫
    1997 年 26 巻 6 号 p. 354-359
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤 (AAA) に伴う凝固異常の重症度分類を試みた. AAA50症例を対象に入院時所見より三群に分類した〔Class I: Class II条件を満たさない軽症群, Class II: FDP20 (μg/ml) 以上, TAT 20 (ng/ml) 以上, FMテスト陽性のいずれかを満たす過凝固群, Class III: Class II条件に加えて血小板数12万 (/mm2) 以下もしくは出血症状を認める重症群〕. 死亡例はいずれも凝固線溶異常と関連のある病態で, 手術死亡率は Class Iで0% (0/26), Class IIで13% (2/15), Class IIIで22% (2/9) であった. AAAに伴う凝固異常の簡便な重症度評価法と適切な術前の重症度別対応が必要であると思われた.
  • 井手 博文, マティソン 恵, 布川 雅雄, 小久保 純, 野中 健史, 藤木 達雄, 本田 克彦, 佐藤 政弥, 池田 晃治, 須藤 憲一
    1997 年 26 巻 6 号 p. 360-364
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1993年9月より1996年4月までに胸部下行大動脈を主体とした動脈瘤15例に対し, 左開胸による抗血栓処理部分体外循環法を用いた手術を行った. 疾患内訳は, 真性動脈瘤 (うち, 破裂例2例) 10例, 慢性解離性大動脈瘤4例, 大動脈縮窄症を伴う大動脈瘤1例で, 実施した手術は人工血管置換術12例. パッチ閉鎖術3例であった. 手術死亡は1例で, 虚血性心疾患を有する真性下行大動脈瘤破裂, ショックにて緊急手術を行い, 術後, 心筋梗塞によると考えられる急性心不全で失った. その他の14症例では本補助手段に起因すると考えられる血栓塞栓症等の合併症や術後諸臓器不全, 出血性合併症もなく, 全例軽快退院した. 今回の臨床的検討により, 本法は, 胸部下行大動脈手術の補助手段として, 安全で有効な方法であると考えられた.
  • 高木 寿人, 廣瀬 一, 古澤 泰伸, 安田 博之, 久保 清景, 村川 真司, 森 義雄, 滝谷 博志
    1997 年 26 巻 6 号 p. 365-370
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    左室瘤切除術前後に左室造影を施行しえた13例に対して, centerline 法を用いて左室瘤切除前における術後予測局所壁運動および実測術後局所壁運動を比較解析し, さらに有意狭窄を有する右冠動脈に対して同時に施行した血行再建が局所壁運動に与える効果を検討した. 左室全体の機能の指標である駆出率は, 術前における術後の予測と術後とで差がなかった. 全症例および右冠動脈に有意狭窄がなく血行再建を施行しなかった非血行再建群では, どの部位でも術前における術後の予測および術後の局所壁運動に差はなかった. 有意狭窄を有する右冠動脈に対して血行再建を同時に施行した血行再建群では, 右冠動脈支配領域である横隔膜部の局所壁運動は術前における術後の予測より術後のほうが良好であった. 左室瘤切除時の虚血右冠動脈領域に対する血行再建は, この領域の壁運動改善に寄与していると考えられた.
  • 銭 水賢, 岩井 武尚
    1997 年 26 巻 6 号 p. 371-375
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    吻合部動脈瘤は動脈再建術後の合併症の一つである. 過去14年間に東京医科歯科大学第1外科にて経験した腹部大動脈-大腿動脈領域の吻合部動脈瘤13例22個の成因, 診断, 治療と予防などについて検討した. 吻合部動脈瘤は閉塞性動脈疾患の鼠蹊部, 端側吻合部位で多発しており, 発生まで平均期間は40.6か月であった. 全例仮性動脈瘤でその成因としては宿主動脈の変性が18個85.7%と最も多かった. また, 末梢 runoff の悪さなどが瘤の発生に関与すると考えられた. 瘤破裂, 末梢動脈塞栓は重篤な合併症であり早期診断と治療が成績向上につながると考えられた.
  • 白方 秀二, 鴻巣 寛, 沢辺 保範, 吉井 一博, 矢野 裕太郎
    1997 年 26 巻 6 号 p. 376-379
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹痛を伴うショック症状で来院した破裂1例を含む. 脾動脈瘤の3例を報告する. 3例とも女性で, 3例中2例は腹部大動脈瘤と胆石をそれぞれ合併し他疾患精査中偶然に発見され同時手術を行った. Delayed ruptured phenomenon を呈した破裂例は, 2日目に緊急手術を行い救命することができた. 3例とも脾動脈再建は行わず脾摘を行ったが, 組織学的にはすべて動脈硬化性であった. 脾動脈瘤は小さくても破裂の危険があり積極的に手術すべきである.
  • 脇山 英丘, 岡田 昌義, 安宅 啓二
    1997 年 26 巻 6 号 p. 380-383
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    62歳, 男性に発症した右外腸骨動脈から内腸骨動脈にかけての孤立性動脈瘤の一手術例を経験した. 15年来の Behçet 病の既往を有し, 動脈瘤発生の原因と考えられた. Behçet 病の活動性について術前に詳細な検討を行い, 安全に手術を施行できた. 手術は人工血管を用いた解剖学的血行再建術を行った. 本邦では, Behçet 病のうち血管性の副症状を60歳台で発症するのは5%と報告されており, 自験例は比較的稀なケースと考えられる. Behçet 病は慢性反復性の経過をとり, 吻合部仮性動脈瘤の発生や動脈瘤の多発例がしばしば報告されていることから, 今後とも炎症反応の観察を行って再燃に十分注意するとともに, 定期的に画像診断による吻合部異常・異所性動脈瘤発生の有無を follow up する必要がある.
  • 松本 三明, 畑 隆登, 打田 俊司, 津島 義正, 濱中 荘平, 吉鷹 秀範, 藤原 恒太郎, 古川 博史, 黒木 慶一郎, 増田 善逸
    1997 年 26 巻 6 号 p. 384-387
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性. 9年前に弓部大動脈瘤にて人工血管置換術を施行されている. 両下肢の運動および知覚障害を訴え入院した. 両側大腿動脈以下の動脈拍動を触知せず, また入院直後より急性汎発性腹膜炎を発症した. 造影CTと動脈造影にて, 弓部人工血管の近位側吻合部仮性動脈瘤によるグラフト圧迫から下半身の重症虚血をきたしたものと診断し, 緊急手術を施行した. 開腹にて下腸間膜動脈 (以下IMA) 領域の急性腸管壊死を認め, Hartmann の手術を施行した. その後右腋窩-両側大腿動脈バイパス術を施行し下半身への血流改善を図った. 術後はDICと myonephropathic metabolic syndrome (以下MNMS) による腎不全をきたしたが, 救命しえたので報告する.
  • 花房 雄治, 村田 升, 小沢 敦, 太田 宏, 舟波 誠, 井上 恒一, 高場 利博
    1997 年 26 巻 6 号 p. 388-391
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は24歳女性. 軽乗用車運転中, 乗用車と衝突し, 胸部および腹部を打撲し来院した. 胸部X線にて, 上縦隔の拡大がみられ, 胸部CT, 大動脈造影にて胸部下行大動脈に損傷を認めた. また脾破裂, 骨盤骨折を合併しており, 主に下行大動脈破裂による出血性ショックのため受傷4時間後に緊急手術を施行した. ヘパリンを用いた補助手段を使用すると, 他損傷部の出血を助長する恐れがあり, 弓部大動脈近位部, 左大腿動脈間にシャントチューブを用い一時的バイパス下に, 胸部下行大動脈の部分置換術を行い, 同時に摘脾術を施行した. 術後は合併症もなく, 経過良好で社会復帰した. 鈍的外傷による胸部大動脈損傷は多発外傷を伴うことが多く, 手術の際にヘパリンを用いない, 一時的バイパスは致命的出血を防ぐ有効な補助手段であると思われた.
  • 丸井 晃, 望月 高明, 小山 忠明, 三井 法真
    1997 年 26 巻 6 号 p. 392-395
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    右鎖骨下動脈起始異常を伴う偽性大動脈縮窄に合併した遠位弓部大動脈瘤の1手術例を経験した. 症例は22歳女性, 一卵性双生児の姉で, 心室中隔欠損自然閉鎖の既往歴がある. 健康診断の際, 胸部X線写真にて左上縦隔の拡大を指摘され, 精査にて偽性大動脈縮窄に合併した遠位弓部大動脈瘤および右鎖骨下動脈起始異常と診新された. 選択的脳分離体外循環下にて遠位弓部人工血管置換術および左鎖骨下動脈再建術を施行し良好な結果を得た. 偽性大動脈縮窄に合併した動脈瘤は, 壁が脆弱で破裂の危険性が高いため早期手術が必要と思われた. また一卵性双生児の妹には偽性大動脈縮窄を伴っておらず, 同疾患の成因は遺伝的素因でなく大動脈弓の発生異常であるとする説を支持していると思われた.
  • 原 陽一, 黒田 弘明, 石黒 真吾, 浜崎 尚文, 宮坂 成人, 森 透
    1997 年 26 巻 6 号 p. 396-399
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Y型人工血管置換術後遠隔期に発症した下肢虚血を合併した DeBakey I型急性大動脈解離を2例経験した. 症例1は63歳女性, 55歳時に腹部大動脈瘤にて, 症例2は Marfan 症候群の28歳男性, 21歳時に腹部大動脈瘤の破裂にてY型人工血管置換術をうけ, 今回I型解離を発症し来院. 上行大動脈に entry を有し, 解離はY型人工血管中枢側吻合部まで進展, 偽腔が真腔を圧排し下肢虚血を合併していた. 発症より8時間, 6時間に手術を施行した. 症例1は術中破裂にて失ったが, 症例2は大動脈基部~弓部全置換を行い救命した. Y型人工血管置換術後遠隔期の急性大動脈解離の発症は稀で, 下肢虚血を合併した報告例はない. 術前の血行動態について考察するとともに, 補助手段, 術中モニターについて報告した.
  • 長谷川 伸之, 布施 勝生, 加藤 盛人, 上沢 修, 長谷川 剛, 川嶋 隆久, 齊藤 力, 大木 伸一
    1997 年 26 巻 6 号 p. 400-403
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    動脈管開存症術後にMRSA膿胸, 大動脈破裂, 仮性大動脈瘤を発症した1例を救命した. 症例は24歳, 女性. 初回手術で動脈管切離術を施行後, 第5病日に創部から排膿した. 第8病日にはMRSA感染による大動脈破裂で左緊張性血胸となり緊急手術を施行した. 手術は循環停止下に止血術を行い, 一期的に大網充填術を行った. 術後は緑膿菌による肺炎と, 急性腎不全を併発したが, 保存的治療で治癒した. 第37病日に下行大動脈に仮性瘤を形成し, 拡大傾向にあったため, 第56病日に人工血管置換術を施行した. その後は良好に経過した. 一期的な大網充填術は, 感染活動期のMRSAによる重症感染症に対し, 極めて有用な方法であった.
  • 羽賀 將衛, 大谷 則史, 川上 敏晃
    1997 年 26 巻 6 号 p. 404-406
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    患者は69歳, 男性. 1995年10月, S状結腸癌に対しS状結腸切除, 11月, 盲腸多発穿孔に対し右半結腸切除・腹腔ドレナージを施行された. 1996年3月始めより, 38℃以上の弛張熱と赤沈, CRPの高値が持続するため, 再入院した. 腹部CTおよび動脈造影にて, 不整形の腹部大動脈瘤と左総腸骨動脈瘤を認め, 動脈血培養でブ菌陽性の所見と併せ, 感染性腹部大動脈瘤および左総腸骨動脈瘤と診断した. 瘤の急速な増大傾向を認めたため, 準緊急的に手術を施行した. 瘤と周囲組織との強固な癒着により, 感染巣の除去は困難と判断し, 瘤空置および解剖学的バイパス術を施行した. 術後, 白血球数が正常化した後も, 熱発と赤沈, CRPの高値が続いたが, 抗生剤投与を約3か月間にわたり継続し, 熱発, 赤沈, CRPの高値は消退した.
  • 申 範圭, 熊本 隆之, 山野 元嗣, 角田 智彦, 上田 敏彦
    1997 年 26 巻 6 号 p. 407-410
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 男性, 上肢高血圧, 心不全の精査目的にて入院し, 大動脈造影の結果, 孤立性大動脈弓離断症A型と診断した. 手術は, 胸骨縦切開, 腹部正中切開を加え, 大腿動脈送血, 右房脱血の常温部分体外循環下に, 上行大動脈から横隔膜レベルの下行大動脈に extra-anatomical bypass を設置した. 術直後より上下肢血圧差は消失し, 心不全は改善した. 本症例は, 検索しえた限りでは最高齢手術症例であった.
  • 砂澤 徹, 高原 善治, 須藤 義夫
    1997 年 26 巻 6 号 p. 411-413
    発行日: 1997/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は74歳女性. 右大腿中央部の拍動性腫瘤および右大腿疼痛にて発症した. 血管造影にて右浅大腿動脈に最大径45mmの瘤を認め, 瘤より造影剤の漏出を認めたため, 浅大腿動脈瘤破裂と診断した. 手術は右大伏在静脈採取後, 大腿下部に皮切を加え瘤に到達した. 瘤前後で浅大腿動脈を遮断し, 瘤を切開して流入部と流出部で切断, これを大伏在静脈で再建した. 動脈壁の病理診断は cystic medial necrosis であった. 中膜壊死性の末梢動脈瘤は稀な疾患であり, 文献的考察を加え報告した.
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