日本心臓血管外科学会雑誌
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冠動脈バイパス術における甲状腺機能および循環動態の変化
林田 信彦丸山 寛田山 栄基友枝 博尾田 毅川野 博川良 武美青柳 成明
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1998 年 27 巻 5 号 p. 276-281

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抄録
冠動脈バイパス術を施行した甲状腺機能低下症を伴う6例と甲状腺機能正常例15例を周術期の甲状腺機能および循環動態の変化より比較検討した. 甲状腺機能低下症例では free T3および total T3は術後有意に低下し, 甲状腺機能正常例でも total T3は有意に低下し術後の euthyroid sick syndromeの発生が示唆された. 術後心機能では甲状腺機能低下症例が正常例に比較して中心静脈圧および肺動脈楔入圧は有意に高値で左室一回拍出仕事係数は有意に低値であった. また術後ドーパミンおよびドブタミン必要量も同群で有意に高値を示し, 左心機能の低下が示唆された. 全例での対外循環後の free T3濃度は同時点での左室一回仕事係数と有意な正の相関を示し, free T3の inotropic effect が示唆された. さらに術前の free T3濃度は術後のドーパミンおよびドブタミン必要量と有意な負の相関を示しており, その濃度が術後低心拍出量症候群発生の予測因子となりうることが示唆された. 甲状腺機能低下症を伴う冠動脈バイパス症例は術後の低心拍出状態が起こりやすく, ホルモン補充療法を含めた注意深い周術期管理が必要である.
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