日本心臓血管外科学会雑誌
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Stanford A型大動脈解離の外科治療と遠隔成績
遺残解離腔拡大要因の検討
丸井 晃望月 高明三井 法真小山 忠明
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1998 年 27 巻 5 号 p. 270-275

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抄録
1984年より1993年までの期間に当施設にて手術を行った Stanford A型の大動脈解離55症例のうち, 在院死亡および追跡不能例を除いた33症例における遺残解離腔拡大の要因および治療成績を検討した. 術式は原則として上行大動脈のみに手術操作を加えた. 経過観察期間は平均7.7年で, 退院後に大動脈瘤に起因した死亡は認めなかった. 遠隔期の遺残解離腔拡大は7例に認め, 追加手術は5例に合計12回施行した. Marfan 症候群および, 病理組織にて大動脈中膜変性を示した非 Marfan 症例では, 高頻度に遠隔期の遺残解離腔の拡大をきたし追加手術を必要としたため, 初回時に拡大手術が必要と思われた. しかし非 Marfan 症候群でも中膜変性がなければ遺残解離腔の存在は遠隔期拡大の要因とはならなかった. 非 Marfan 症例および中膜変性のない症例では, 上行大動脈のみに手術操作を加える術式でも, 遠隔成績は充分許容できる範囲であり有効な治療手段であった.
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