日本心臓血管外科学会雑誌
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冠動脈バイパス術後心不全症例に対する milrinone の効果
林田 信彦米須 功榎本 直史川良 武美丸山 寛田山 栄基友枝 博尾田 毅炊江 秀幸青柳 成明
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1998 年 27 巻 6 号 p. 351-356

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抄録
冠動脈バイパス術後の心不全症例に対する phosphodiesterase III阻害剤である milrinone の効果を検討した. 術後の心係数が2.0l/min/m2以下あるいは肺動脈楔入圧が12mmHg以上の心不全を有する20例を対象とし, milrinone (0.5μg/kg/min) を投与した Milrinone 群 (n=10), 非投与の Control 群 (n=10) の2群に分類し, 循環動態および臨床成績より比較検討した. 肺動脈楔入圧および全身血管抵抗は milrinone 投与により有意 (p<0.05) に低下した. 心係数は Control 群に比較し Milrinone 群で有意 (p<0.05) に高値で左室1回拍出仕事係数の上昇も同群で早期であった. Rate pressure product は有意な変化は認めなかった. Milrinone 群は Control 群に比較し中枢-末梢の温度較差も有意に (p<0.05) 低値であり, 術後のカテコールアミン必要量も同群で有意 (p<0.05) に低値であった. 本検討では milrinone 投与に伴う有意な副作用の増加は認められなかった. 以上の結果より冠動脈バイパス術後の心不全症例に対して milrinone は陽性変力作用および血管拡張作用を有していた. 従来の心不全の治療薬であるカテコールアミン製剤および血管拡張薬とともに本薬剤が有効な治療薬となることが示唆された.
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