日本心臓血管外科学会雑誌
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鈍的外傷による心臓損傷例の検討
診断と治療における pit fall
小山 照幸遠藤 慎一北中 陽介西村 晃一舟木 成樹武井 裕稗方 富蔵
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1998 年 27 巻 6 号 p. 345-350

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抄録

鈍的外傷による心臓損傷は, 体表外傷が著明でない場合や, 他臓器損傷があってそちらに注意がそらされる場合, 診断は困難である. 即座の治療を必要とするため救命率は低いが, 迅速な対応により救命できる症例もある. 当院では過去10年間に16例の心臓損傷を経験し, うち4例を救命し得た. しかし来院時心肺停止例は蘇生できなかった. また来院時, 心拍のある例でも, 他臓器損傷が重篤な例は出血性ショックのため救命できなかった. 心臓の損傷部位を同定できた症例を検討すると, 右心系に多い傾向が認められた. 右心系の損傷例は救命可能で, 左心系の損傷例には救命例はなかった. 救命のポイントは, まず心破裂を疑うこと, 心エコーによる即座の診断と経時的心嚢液量の変化の観察, できるだけ迅速な他臓器損傷の把握が重要であると考えられた.

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