日本心臓血管外科学会雑誌
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早期血栓閉塞型大動脈解離慢性期に腹部大動脈真腔閉鎖をきたした1例
迫 秀則藤原 省三葉玉 哲生森 義顕重光 修宮本 伸二穴井 博文添田 徹卜部 省悟和田 朋之
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1999 年 28 巻 4 号 p. 264-267

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抄録
早期血栓閉塞型大動脈解離の慢性期に急性腎不全, 両下肢虚血を生じた症例を報告する. 症例は62歳女性. 平成8年9月6日, 急性大動脈解離 (Stanford A) の診断で当科に入院したが, 早期血栓閉塞型で, 上行大動脈の解離も軽度なため保存的治療の方針とした. 外来経過観察中, 10月15日より腰痛, 下肢冷感が出現し, さらに全身浮腫, 尿量低下を認めたため当科に緊急入院となった. 再解離による腹部大動脈の真腔閉鎖により急性腎不全と両下肢虚血を来したものと診断し, 緊急で右腋窩両側大腿動脈バイパス術を施行した. 術後は腎機能の改善と下肢血行の改善を認め, 術後30日目に退院した. 本症例のように, 早期血栓閉塞したものが慢性期に腹部大動脈の真腔閉鎖により急性腎不全, 両下肢虚血を来した例は稀で, 治療方針も確率されていないが, 緊急手術としての腋窩両側大腿動脈バイパス術は有効な治療法と考えられた.
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