2000 年 29 巻 3 号 p. 168-171
大動脈炎症候群は, 主として中膜の組織破壊と結合組織増生を特徴とする非特異的炎症性疾患と定義され, その病態は複雑で手術適応, 手術時期, 術式の選択には細心の注意が必要である. 今回われわれは, 大動脈弁閉鎖不全と左冠状動脈入口部狭窄を合併した大動脈炎症候群の症例を経験した. 術前よりステロイドを投与し炎症所見が沈静化した時点で, 弁輪補強材として自己弁尖を温存・利用した大動脈弁置換および冠状動脈バイパス術を同時に行った. 術後経過は良好であった. 18カ月後の現在, 逆流や炎症の再燃なく経過している.