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鎌田 誠, 井口 篤志, 東福寺 元久, 横山 斉, 秋元 弘治, 近江 三喜男, 田林 晄一
2000 年29 巻3 号 p.
127-133
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
過去10年間に経験した4時間以上の長時間大動脈遮断症例30例を心筋保護別に分け検討した. 対象は crystalloid 順行性群9例, crystalloid 順行性・逆行性併用群5例, blood 順行性・逆行性併用群16例で, 大動脈遮断時間の平均はそれぞれ309分, 274分, 275分で, crystalloid 順行性群がやや長い傾向にあったが有意差を認めなかった. 病院死亡率, 低心拍出量症候群 (LOS) 発症率, 大動脈遮断解除後の自己拍動再開率において, blood 順行性・逆行性併用群が crystalloid 順行性群に比べ有意に良好な結果を得た. crystalloid 順行性・逆行性併用群と blood 順行性・逆行性併用群の間には, いずれの指標においても有意差を認めなかったが, blood 順行性・逆行性併用群のほうが良好な印象を得た. 以上より, 順行性・逆行性併用 cold cardioplegia 法は長時間大動脈遮断症例において非常に有用と思われた.
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金岡 祐司, 種本 和雄, 黒木 慶一郎
2000 年29 巻3 号 p.
134-138
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
近年, 心臓外科領域でも小切開手術が種々行われているが, 今回われわれは手術創に対する意識調査を行った. 胸骨正中切開で心臓手術を行った患者139名と職員32名に面接方式でアンケート調査を行った. 患者139名のうち自分の傷が大きいと答えた人は10.1%であり, 61.9%の人はまったく気にならないと答えた. 傷の大きさよりケロイドが気になると答えた人が20.1%と多かった. 手術を受けるにあたって傷の大きさが気になると答えた人は職員では100%であった. 傷の大きさが気になると答えた患者は30.9%で, 67.6%の人はまったく気にならないと答えた. また, 手術の結果以外に重視するものとして, 術後の痛み, 入院期間, 社会復帰までの期間, 傷の大きさ, 傷の位置の順であった. 手術創が小さいということについて, 健康な医療従事者と患者の間に意識の差異があった.
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南方 謙二, 小西 裕, 松本 雅彦, 野中 道仁, 山田 就久
2000 年29 巻3 号 p.
139-143
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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1987年から1998年までに施行した単独冠状動脈バイパス術連続681例 (再手術, off-pump 症例は除く) を対象として, 術前脳梗塞の既往を含めた患者背景ならびに術後脳梗塞合併の危険因子について検討した. ここで術後脳梗塞とは, 手術直後つまり麻酔から覚醒したときに症状の出現を確認できたものに加え, 術後4週間以内の周術期に発症したものと定義した. 術前脳梗塞の既往は98例 (14%) に認め, 既往のない群 (583例) に比べ有意に高齢で閉塞性動脈硬化症 (ASO) の合併が多かった. 術後脳梗塞は14例 (2.0%) に認め, うち7例は術直後に発症しており, 手術による直接的な影響が強く疑われた. これらの症例を術後脳梗塞の合併のない群と比較したが, 術前脳梗塞の既往, 人工心肺時間, ASO合併などに有意差はみられなかった. 術後脳梗塞発症の14例のうち4例 (29%) が死亡しており予後を大きく左右していた.
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左房粘液腫に対する到達法と長期遠隔成績
山村 光弘, 宮本 巍, 山下 克彦, 八百 英樹, 井上 和重, 南村 弘佳, 和田 虎三, 田中 宏衛, 良本 政章, 杉本 智彦
2000 年29 巻3 号 p.
144-148
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
今回われわれは当科において過去20年間に経験した心臓粘液腫連続17例の臨床像・手術術式・手術成績について検討を加えた. 男性5例・女性12例, 年齢は22~78歳 (平均55歳), 発生部位は左房13例・右房2例・右室1例・多発例1例であった. 左房粘液腫摘出術は2例を除き, 両心房縦切開を用いた心房中隔合併切除・腫瘍摘出術を標準術式とし, うち2例に僧帽弁輪縫縮術を追加した. 摘出した粘液腫の重量は6~310g (平均54g) であった. 手術・病院死亡はなかったが, 術後9年目に再発1例 (多発例・他院にて再手術) を認めた. おもな術後合併症は洞不全症候群 (ペースメーカー植え込み術) を1例, 術後一過性心房細動を2例, 術後急性肺水腫 (右室粘液腫摘出術直後) を1例認めた. 長期遠隔成績は追跡率100%, 平均観察期間約7年1カ月で, 17例中2例を非心臓死で失い, 10年累積生存率は75% (
n=6) であった. 左房粘液腫に対しては発生母地を直視下に観察でき腫瘍を
en bloc に摘出できる両心房縦切開を用いた心房中隔合併切除・腫瘍摘出術は有用であると思われる.
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森田 一郎, 稲田 洋, 正木 久男, 村上 泰治, 田淵 篤, 福廣 吉晃, 石田 敦久, 菊川 大樹, 遠藤 浩一, 藤原 巍
2000 年29 巻3 号 p.
149-155
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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1998年4月までに当科にて, 頸動脈閉塞病変に対して外科的治療を施行した22例について検討したので報告する. 成因別内訳は動脈硬化16例, 大動脈炎症候群6例であった. 今回は成因別に検討した. 遠隔成績において, 動脈硬化症例では短期閉塞は (術後1カ月以内) 認めず, 晩期閉塞 (術後1カ月以降) をバイパス症例で1例認めた. 大動脈炎症候群症例では短期閉塞は認めなかったが, 晩期閉塞を2例認めた. 閉塞の原因は, 動脈硬化ではウェルナー症候群による吻合部内膜肥厚, 大動脈炎症候群では炎症の再燃であった. 術中モニターとしては, 断端圧 (50mmHg以上), 経頭蓋ドプラ (TCD) や脳波を用いて, また術前の脳梗塞の有無を考慮し, 内シャントの選択を行い, 術中術後の脳合併症を認めなかった. 再建時のグラフトは自家静脈を第1選択とし, グラフトの屈曲, 蛇行に十分注意することが重要である. 大動脈炎症候群においては炎症のコントロールが重要で, 手術適応決定のさいに眼底所見・眼底血圧を参考にするのは有用と考えられた.
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浜田 良宏, 山本 哲也, 中田 達広, 加洲 保明, 渡部 祐司, 吉川 浩之, 河内 寛治
2000 年29 巻3 号 p.
156-160
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
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パルス式色素希釈法にて心拍出量, 循環血液量 (BV) を測定できるDDG-2001を使用し, 術前後に心係数 (CI), BVを測定し, その精度を検定した. さらに術後管理における意義について検討した. 開心術14例を対象に, DDG-2001により, 人工心肺前, 手術終了直後, 4時間後, 12時間後にCI, BVを測定した. CIは熱希釈法と比較し, BVは人工心肺開始前後に測定したヘモグロビン値と充填量から計算した値と比較した. CI; 相関係数0.77, 回帰直線の傾き0.849, BV; 相関係数0.821, 傾きは0.844であった. 手術終了時BVは低下していたが, 4時間後, 12時間後BVは増加した. しかし, 体液バランスは負であった. パルス式色素希釈法によるCI, BVは他の方法による値と良好な相関があった. 術直後BVは低下しており, その後, 体液バランスは負であったが, BVは増加した.
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自験例を含めた本邦報告例についての検討
花房 雄治, 安藤 太三, 大北 裕, 師田 哲郎, 湊谷 謙司, 松川 律, 北村 惣一郎
2000 年29 巻3 号 p.
161-167
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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Salmonella 菌による感染性動脈瘤3例を経験し, 本邦報告例14例を含めた17例の検討を行った. 男女比は15:2と男性に多く, 平均年齢は66歳であった. 発熱はほぼ全例に, 疼痛は77%に認めた. 菌血症は12例中11例と, 他の感染性動脈瘤に比べ高頻度に認める傾向があった. 瘤の局在は17例中14例が腹部大動脈で, 瘤形態は仮性瘤, 嚢状瘤が15例で, 破裂は70%に認めた. 治療の原則は有効な抗生剤の投与と手術療法であり, 17例中15例に手術が施行された.
in situ 瘤人工血管置換術を9例に, extra-anatomic bypass を6例に施行し, 14例が生存した. 自験例3例は全例男性で, 2例に術前菌血症を認めた. 3例中2例は, extra-anatomic bypass を施行し, うち1例を失った.
Salmonella 菌による感染性動脈瘤は破裂の頻度が高く, 早期診断, 抗生剤投与, 手術療法が不可欠である.
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松下 弘雄, 國友 隆二, 宇藤 純一, 原 正彦, 北村 信夫
2000 年29 巻3 号 p.
168-171
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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大動脈炎症候群は, 主として中膜の組織破壊と結合組織増生を特徴とする非特異的炎症性疾患と定義され, その病態は複雑で手術適応, 手術時期, 術式の選択には細心の注意が必要である. 今回われわれは, 大動脈弁閉鎖不全と左冠状動脈入口部狭窄を合併した大動脈炎症候群の症例を経験した. 術前よりステロイドを投与し炎症所見が沈静化した時点で, 弁輪補強材として自己弁尖を温存・利用した大動脈弁置換および冠状動脈バイパス術を同時に行った. 術後経過は良好であった. 18カ月後の現在, 逆流や炎症の再燃なく経過している.
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花房 雄治, 大北 裕, 安藤 太三, 湊谷 謙司, 田鎖 治, 北村 惣一郎
2000 年29 巻3 号 p.
172-174
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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症例は73歳, 男性. 2年前より慢性関節リウマチにて経過観察中に腹部大動脈瘤を指摘され, Y型人工血管置換術を施行した. 術後第7病日目より38℃を超える弛張熱が出現. 動脈血培養の結果
Bacteroides fragilis が検出された. 抗生剤投与にもかかわらず, 炎症所見は沈静化せず, CT上人工血管周囲にガスを伴った液貯溜像を認めたため, 人工血管感染の診断にて術後第13病日に人工血管摘出, extra-anatomic bypass, 大網充填, ドレナージ術を施行した. 術後, 動脈血, ドレーン排液の培養は陰性化し, 抗生物質の経静脈投与を44日間継続し, 元気に退院した.
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田中 常雄, 大川 育秀, 外山 真弘, 橋本 昌紀, 石田 成吏洋, 松本 興治
2000 年29 巻3 号 p.
175-178
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
症例1: 74歳, 女性. 72歳時, 冠動脈バイパス手術を受けたが, グラフト閉塞のため再手術となった. 橈骨動脈を用い, まず左腋窩動脈に中枢側吻合を行った. 第2肋間よりグラフトを胸腔内に通し, 左小開胸で露出したLAD (#8) に末梢側吻合を行った. 症例2: 64歳, 男性. 冠動脈バイパス術後, 胸痛がみられ, LITA-LAD吻合部にカテーテルインターベンションが行われたが, LITAが完全閉塞となり, 手術目的にて当院入院となった. 大伏在静脈を採取し, 症例1と同様の術式で手術を行った. この方法では, 左前下行枝または対角枝の一部への血行再建のみ可能であるが, 最近では, カテーテルインターベンションとの併用が有用であるとの報告も多く, 冠動脈バイパス再手術症例であっても, 低侵襲な本治療法が可能であると考えられる.
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小泉 信達, 川口 聡, 石丸 新, 小櫃 由樹生, 土田 博光, 石川 幹夫
2000 年29 巻3 号 p.
179-183
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
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動脈硬化に起因した複数の併存症を有する腹部大動脈瘤症例に対し, 手術侵襲を軽減する目的でステントグラフト内挿術を施行した. 極薄ダクロン人工血管に自己拡張型金属ステントを縫着したテーパー (先細り) 型ステントグラフトを作製し, これを透視下にカテーテルを用いて腹部大動脈より左総腸骨動脈に留置固定し, 大腿-大腿動脈交叉バイパスを設置することで瘤内血流を遮断し, 良好な結果を得た. 本法は外科的手術と比較して侵襲が少なく有用な治療法となり得る.
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南 裕也, 脇田 昇, 川西 雄二郎, 北野 育郎, 志田 力
2000 年29 巻3 号 p.
183-186
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
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坐骨動脈は発生学的には胎児期に下肢の主要血管として存在し, その後主要血管が大腿動脈に移行するに従い, 退化し消退する. しかし稀に坐骨動脈が遺残し動脈瘤や血栓閉塞を生じて臨床上問題となることがある. 症例は78歳女性, 突然の左下肢痛を認めて来院. 血管造影にて左右の遺残坐骨動脈と左遺残坐骨動脈の骨盤内閉塞が認められたので人工血管による左大腿-膝窩動脈バイパス術を施行した.
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山口 聖一, 村山 博和, 林田 直樹, 松尾 浩三, 籏 厚, 浅野 宗一, 渡邊 裕之, 中川 康次, 龍野 勝彦
2000 年29 巻3 号 p.
187-190
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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症例は12歳, 女児. 25生日に, A型大動脈弓離断症に対し径7mmの Dacron 人工血管を用いた上行大動脈-胸部下行大動脈バイパス術を行い, 同時にPDA結紮術, 肺動脈絞扼術も施行. さらに1歳8カ月時にVSD閉鎖術を施行した. 10歳ごろより運動時などに頭痛, めまいが出現するようになり, 12歳時に精査目的で入院となった. 入院時の上肢血圧は147/70mmHg, 上下肢血圧較差は60mmHgで, 血管造影からバイパス術に用いたグラフトの成長に伴う相対的狭窄と診断し1998年3月10日, intrapleural, preperitoneal route にて右側 axillo-iliac bypass 術を施行した. 術後の経過は順調で, 術後6カ月時の上肢血圧は108/63mmHg, 上下肢血圧較差は18mmHgにまで減少し, 自覚症状も消失した. 本症例のような大動脈弓離断症バイパス術後遠隔期に生じる上下肢の血圧較差を減少させる目的で, 同 route を用いた axillo-iliac bypass による血行再建術は安全でかつ有用な手段であると考えられた.
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泉山 修, 山下 昭雄, 杉本 智, 馬場 雅人
2000 年29 巻3 号 p.
191-194
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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人工血管置換術後の遠隔期合併症として吻合部動脈瘤がある. 真性弓部大動脈瘤に対して三分枝付人工血管を用いた弓部大動脈全置換術後に人工血管同士の吻合部に仮性動脈瘤を認めた. 症例は75歳男性. 真性弓部大動脈瘤の診断下に, 超低体温, 選択的脳分離灌流法を補助手段として, 手製の三分枝付人工血管を用いて弓部大動脈全置換術を施行した. 術後5年目に woven Dacron graft (Intervascular graft
®) 26mmの主幹と12mmの分枝吻合部間に仮性動脈瘤が発生したため, 再手術を施行した. 超低体温循環停止下に仮性動脈瘤を切除し, 再縫合を行った. 弓部大動脈全置換術後, 使用した三分枝付人工血管同士の吻合部に発生した仮性動脈瘤はきわめて稀と思われる.
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井上 和重, 宮本 巍, 佐賀 俊彦, 山下 克彦, 八百 英樹, 和田 虎三, 良本 政章
2000 年29 巻3 号 p.
195-198
発行日: 2000/05/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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症例は72歳, 女性. 下行胸部大動脈瘤に左冠状動脈狭窄と左総腸骨動脈狭窄を合併した症例に対し, 3病変に対して一期的手術を施行した. すなわち左後側方切開第6肋間開胸および左側腹部斜切開を行い, まず腹部大動脈に送血用の10mm人工血管を端側吻合した. 左大腿静脈脱血により体外循環を開始し, 心拍動下に左前下行枝に大伏在静脈片を端側吻合した. 次に下行胸部大動脈瘤を24mm人工血管で置換し, 静脈グラフトの中枢側を人工血管側壁に端側吻合した. 部分体外循環を終了後, 送血用に用いた人工血管を左外腸骨動脈に端側吻合した. 左後側方開胸で冠状動脈と下行胸部大動脈対するアプローチは手技的に問題はなく, 心拍動下に冠状動脈バイパスを行うことにより補助手段を簡便化しうると考えられる.
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