抄録
症例は72歳, 女性. 下行胸部大動脈瘤に左冠状動脈狭窄と左総腸骨動脈狭窄を合併した症例に対し, 3病変に対して一期的手術を施行した. すなわち左後側方切開第6肋間開胸および左側腹部斜切開を行い, まず腹部大動脈に送血用の10mm人工血管を端側吻合した. 左大腿静脈脱血により体外循環を開始し, 心拍動下に左前下行枝に大伏在静脈片を端側吻合した. 次に下行胸部大動脈瘤を24mm人工血管で置換し, 静脈グラフトの中枢側を人工血管側壁に端側吻合した. 部分体外循環を終了後, 送血用に用いた人工血管を左外腸骨動脈に端側吻合した. 左後側方開胸で冠状動脈と下行胸部大動脈対するアプローチは手技的に問題はなく, 心拍動下に冠状動脈バイパスを行うことにより補助手段を簡便化しうると考えられる.