抄録
軽度大動脈弁疾患と冠状動脈疾患の合併例に, 大動脈弁置換術 (AVR) と冠状動脈バイパス手術 (CABG) 同時施行の妥当性を評価するために, AVR+CABG同時手術例17例を対象とし, 術後近接期および遠隔期予後を検討した. 対象を大動脈弁閉鎖不全症 (AR) 群 (5例), 大動脈弁狭窄症 (AS) を圧較差により mild 群 (2例), moderate 群 (6例), severe 群 (4例) に分けた. 平均バイパス枝数は1.8枝, 人工弁は全例機械弁であった. 在院死は severe AS群の1例のみで, 術後合併症は, mild AS群で一過性の完全房室ブロックを1例, moderate AS群で脳梗塞2例, 一過性の意識障害1例, 術中心筋梗塞1例, severe AS群で多臓器不全, 心不全, 腎不全が1例ずつであった. 遠隔期予後は16例中人工弁関連事故が3例, 死亡例は2例で中枢神経障害が1例, 心不全が1例であった. 以上より, 大動脈弁疾患合併冠状動脈疾患に対する手術戦略は, 同時手術例の予後が良好であるため同時手術は妥当であると考える.