日本心臓血管外科学会雑誌
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妊娠中に発症した感染性心内膜炎に対する治療
発症時期の異なる2例に対する緊急手術の経験
長谷川 滋人麻田 邦夫岡本 順子野村 幸哉澤田 吉英近藤 敬一郎佐々木 進次郎
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2001 年 30 巻 3 号 p. 152-156

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抄録
妊娠中で発症時期の異なる感染性心内膜炎 (IE) の2例に, 1例目は進行する急性心不全, 2例目は巨大な可動性疣贅とくり返す塞栓症に対して, 緊急的に僧帽弁置換術 (MVR) を施行し, いずれも良好な結果を得たので報告する. 1例目は妊娠16週で, すでに胎児は死亡しており, そのまま生体弁にて緊急僧帽弁置換術を施行し, 6病日目に帝王切開にて死児を娩出した. 2例目は妊娠29週目であり, 緊急帝王切開で胎児を娩出後, ひき続いて機械弁にてMVRを施行した. いずれの症例もIE活動期であり, また2例目の胎児は1,374gで8日間の呼吸管理を必要としたが, 母児ともに救命しえた. 妊娠中に発症したIEに対する治療方針を決定するうえで, 妊婦の状態, 妊娠時期および胎児の状態, 人工弁の選択など総合的な判断が必要である. とくに緊急手術では, まず母体を救命することが大前提であるが, とくに産科, 小児科と密接な連携をとりながらつねに母体と胎児の両者にとって安全で適切な治療法を模索する必要がある.
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