抄録
大動脈弁閉鎖不全症を伴う, 無冠動脈洞に限局した Valsalva 洞動脈瘤に対して, aortic root remodeling を行った. 患者は49歳の女性で, Marfan 症候群 (MFS) を疑う家族歴があったが, 患者自身にはMFSの診断基準を満たす骨格, 眼症状はなかった. 無冠動脈洞に限局した約7cmの心外型非破裂性の Valsalva 洞動脈瘤にII度の大動脈弁閉鎖不全症を伴っていた. 無冠動脈洞のみと上行大動脈を置換する remodeling を行い, 術後大動脈弁閉鎖不全症は軽快した. 本術式では残存する Valsalva 洞や大動脈の拡大, ARの進行に注意が必要であるが, 大動脈弁と正常な左右の Valsalva 洞を温存することができ, 良好なQOLが期待できると考えられる.