日本心臓血管外科学会雑誌
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上行大動脈早期血栓閉塞をきたした Stanford A型急性大動脈解離の治療方針の検討
大保 英文志田 力小沢 修一麻田 達郎向原 伸彦樋上 哲哉岩橋 和彦山下 輝夫小川 恭一
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2001 年 30 巻 6 号 p. 280-284

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抄録

1998年までの4年間に, 早期に上行大動脈の解離腔の閉塞を認めたA型解離21例を対象とした. 原則的に降圧療法を行ったが, 上行大動脈径が50mmを超えるかまたは再解離をきたした時点で手術を行った. Entry の部位をCT, 血管造影, 手術所見などから判定し, 症例を DeBakey 分類のI型 (n=8), II型 (n=6), III型の逆行性解離 (IIIR, n=7) に分けて検討を加えた. 急性期死亡は2例あり, 内訳はII型の上行大動脈破裂1例, IIIR型の心房細動に起因する塞栓が1例であった. 発症2週間以内の急性期に4例, 発症2カ月以内の亜急性期に6例が手術となった. 病型はI型, II型が9例で, IIIR型は1例のみであった. 遠隔死亡は2例で, 1例はI型の遠隔期手術死亡, 他の1例は脳梗塞であった. 最長4年での手術の回避率はI型25%, II型21%, IIIR型83% (p=0.07) であった. A型解離は早期血栓閉塞型でも手術を前提として治療するべきであるが, 下行大動脈に明らかに entry を認めIIIR型と判断しうる場合には降圧療法を試みる価値があると考える.

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