日本心臓血管外科学会雑誌
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上腕絞扼・牽引による急性上腕動脈閉塞の1例
木村 真樹高木 寿人森 義雄宮内 忠雅広瀬 一
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2002 年 31 巻 1 号 p. 52-54

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抄録
症例は61歳女性.織物作業中,右上腕に巻いていたビニール紐が織機に巻き込まれ,右上腕が絞扼,牽引された.直後より右前腕のしびれ,冷感を自覚した.近医で右橈骨動脈の拍動の触知不能に気付かれ,当科へ緊急入院となった.入院時の動脈造影で絞扼部位に一致し右上腕動脈の末梢側の完全閉塞を認め,同動脈の橈骨および尺骨動脈分岐部より末梢は側副血行で造影された.手術では上腕動脈の内膜は全周性に断裂し,同部位に血栓を形成していた.血栓を除去し,病変部位を十分に切除した.同一視野内に存在した尺側皮静脈をグラフトとして間置した.再建後の橈骨動脈の拍動は触知良好であった.動脈が強い力で牽引された場合には,全周性の内膜断裂が認められる.自験例は絞扼による直接的な外力に牽引が加わり内膜断裂を生じ,そのため動脈閉塞をきたしたと考えられる.
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