日本心臓血管外科学会雑誌
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31 巻, 1 号
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  • 渡部 芳子, 石丸 新, 川口 聡, 島崎 太郎
    2002 年 31 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    慢性期の偽腔開存型大動脈解離に対するステントグラフト内挿術後の胸水貯留について検討した.16例についてCTより術前胸水ありをP群,術前胸水はなく術後胸水出現ありをE群,出現なしをN群と分類した.各群間で年齢,動脈最大径,手術施行時期,術後の発熱期間,白血球数,CRP,呼吸器合併症を比較した.P群は4例,E群は4例,N群は8例であった.P群の胸水は術後も不変であった.年齢,動脈最大径,手術施行時期,白血球数,CRP値およびそれらの推移は各群で差がなかった.発熱期間はE群とN群,E群とP群の間で有意差を認めた.全例で呼吸器合併症はなかった.本法が原因とみられる胸水貯留は25%あり,発熱が遷延化したが呼吸器合併症はなかった.本法の呼吸機能に与える影響は比較的低いものと考える.
  • 郷良 秀典, 西田 真彦, 平田 健, 美甘 章仁, 池田 宜孝, 岡田 治彦, 浜野 公一, 善甫 宣哉, 江里 健輔
    2002 年 31 巻 1 号 p. 8-11
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    開心術における虚血/再灌流障害に好中球が関与しているか否かを知る目的で,大動脈遮断前後で冠循環での顆粒球エラスターゼおよびミエロパーオキシダーゼ産生量を測定した.再灌流後,冠循環での顆粒球エラスターゼおよびミエロパーオキシダーゼ産生量は有意に上昇した.さらに再灌流後の冠循環での顆粒球エラスターゼ,ミエロパーオキシダーゼ産生量は大動脈遮断時間と正の相関を示した.これらの結果から,開心術における心虚血/再灌流障害に好中球が関与していることが示唆された.
  • 間瀬 武則, 成宮 千浩, 青山 貴彦, 永田 昌久
    2002 年 31 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    急性A型大動脈解離症例の術前造影CTの画像解析からentryの存在部位の推定法を検討した.Marfan症候群を除く連続手術症例21例のうち,術前検査されていた19症例を対象とした.CT画像の大動脈断面径の計測,面積の算出を行い,術中所見によりentryが上行大動脈に存在した群(A群;7例)と弓部,下行大動脈に存在した群(B群;12例)の2群間で比較検討した.大動脈弓部における真腔の面積比率がA群では65%と有意に高く,B群では50%未満と低く,両群間の判別指数は55.1%であった.また,上行,下行大動脈における真腔径比率はB群では,A群と比較して低下しており,両群間の判別指数はそれぞれ68.2%,77.3%と上行,下行大動脈においてB群の解離腔の拡大所見を認めていた.急性A型大動脈解離において術前造影CT検査の詳細な画像解析の検討は,entryの存在部位の推定と治療方針の決定に有用である.
  • 真鍋 晋, 田中 啓之, 恵木 康壮, 長谷川 悟, 渡辺 正純, 大島 永久, 坂本 徹, 砂盛 誠
    2002 年 31 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    透析患者11例(血液透析(HD)患者8例,腹膜透析(PD)患者3例)の心臓手術を経験した.年齢は36歳から73歳(平均57.3歳),男性7例,女性4例,透析期間は1~19年の平均5.6年,疾患は弁膜症1例,虚血性心疾患10例であった.透析管理方法として,術前はHD患者では前日に通常どおりの透析を行い,PD患者においては前日まで通常どおりPDを行った.術中は血液濾過を行い,術後はHD患者では第1病日よりHDを行い,その後は隔日でHDを行った.PD患者ではICU帰室早期よりPDを再開した.HD患者では初回透析時に低血圧をきたす傾向が認められたが,カテコラミン投与,アルブミン負荷にて対応可能であった.HD群,PD群ともに,尿毒症性毒素の除去,電解質濃度,酸塩基平衡いずれも良好にコントロールできた.手術死および在院死はなく,平均入院日数は41.0日であり,ほぼ満足できる成績が得られた.
  • とくに新しい概念であるショック時間指数を中心に
    前田 光徳, 小長井 直樹, 矢野 浩己, 三坂 昌温, 工藤 龍彦, 石丸 新
    2002 年 31 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    破裂性腹部大動脈瘤の手術成績は,いまだ予後不良であり,これを左右する因子について検討した.1992年から1999年の間で当施設で経験した破裂性腹部大動脈瘤中,手術を施行した18例を対象とした.術前の状態として,Hb9.0g/dl未満,Cr2.1mg/dl以上,虚血性心疾患の既往,Fitzgerald(F)分類の4群,ショック発症から手術施行まで6時間以上経過したものは予後不良であり,とくにショック時間指数(=ショック発症から手術施行までの時間÷腹痛などの症状発症から手術施行までの時間)0.3以上の症例ではF分類によらず有意に致死率が高かった.術中因子としては,出血量,輸血量6,000ml以上,手術時間400分以上の症例は予後が悪い傾向にあった.これら因子を念頭において予後を推測し,治療にあたるべきと考えられた.
  • 岡野 高久, 佐藤 伸一, 神田 圭一, 坂井 修, 嶌田 泰之, 夜久 均, 北村 信夫
    2002 年 31 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    特製バルーン付きダブルルーメンカテーテルを開発し,それを用いて右内頸静脈直接穿刺法による逆行性脳灌流を行った.1996年11月から2000年9月までに当科で行った胸部大動脈瘤単独手術症例73例中,本カテーテルを34例に用いた.胸骨正中切開アプローチが9例,左開胸アプローチが25例であった.平均逆行性脳灌流時間は26.8分,灌流圧は20.0mmHg,灌流量は202.6ml/minであった.本カテーテル留置に要する時間は15分程度であった.造影剤を用いて透視下に頸静脈内に確実に灌流されることを執刀前に確認した.本法は,透視装置以外の特別な設備を必要とせず幅広い施設で施行可能であり,逆行性脳灌流を安全かつ確実に行える有効な方法である.
  • 大腿部穿刺例を中心に
    矢野 浩己, 小長井 直樹, 前田 光徳, 伊藤 幹彦, 松丸 泰介, 工藤 龍彦, 三坂 昌温, 石丸 新
    2002 年 31 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1991年1月より2000年12月までに手術を行った,カテーテル挿入による末梢血管損傷30例を対象とした.内訳は仮性動脈瘤19例(63.3%),動静脈瘻6例(20%),出血3例(10%),血栓閉塞1例(3.3%),仮性動脈瘤+動静脈瘻1例(3.3%)であり,穿刺口縫合閉鎖術を26例(86.6%)に,動脈結紮術を2例(6.6%)に,血栓除去術+PTA(percutaneous transluminal angioplasty)と瘤切除術をおのおの1例(3.3%)に施行した.患者は,既往症に糖尿病や高血圧をもつ頻度が高い傾向にあった.術後は2例に創部感染を起こし二次縫合を要したが他の合併症は認めなかった.仮性動脈瘤は中枢側動脈の遮断と指による圧迫で安全に縫合閉鎖しえた.動静脈瘻は積極的な外科治療で合併症なく治癒しえた.出血,血栓閉塞は迅速な対応が必須である.本症の発生予防のためには的確な穿刺とカテーテル抜去後の確実な圧迫止血が何よりも励行されるべきである.
  • 角南 博, 入江 博之, 大島 祐, 石野 幸三, 河田 政明, 紀 幸一, 長尾 俊彦, 飯田 英隆, 手取屋 岳夫, 佐野 俊二
    2002 年 31 巻 1 号 p. 37-39
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    当科ではコロナリーシャントチューブを用いたoff-pump CABGで完全血行再建している.今回1999年2月から11月までのoff-pump CABG33例(年齢67.0±7.6歳)を検討した.On-pump移行症例は認めなかった.吻合数は,平均2.8±0.8本で,手術病院死亡なく,LOS・IABP使用・縦隔洞炎・脳合併症なども認めなかった.これらの症例のmax CPK-MBは平均25.9±18.8IU/lで冠動脈のスパスムによると思われるPMIを1例認めた.術後抜管までの時間・手術室抜管数・ICU滞在日数・術後滞在日数・入院費についてoff-pump群とon-pump群を比較したが,off-pump CABG群のほうが有利であった.開存率は前期85%,後期97%,全体で閉塞4例,吻合部狭窄1例であった.
  • 西 宏之, 西垣 恭一, 久米 庸一, 宮本 勝彦
    2002 年 31 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    小正中皮膚切開,胸骨部分正中切開による低侵襲アプローチ(MICS)の標準術式としての妥当性について,レジデント群(R群)とスタッフ群(S群)に分類して検討を行った.過去3年に当科で施行したMICSによる心房中隔欠損(ASD)42例(R群15例,S群27例),心室中隔欠損(VSD)47例(R群6例,S群41例)に関して,各項目(手術時間,体外循環時間,心停止(または心室細動)時間,術後挿管時間,ICU滞在日数,術後入院日数,術後ドレーン排液量,術後最高CRP値,術後最高白血球数,皮膚切開長(cm)/身長(m))について比較検討した.手術時間,体外循環時間,VSDの大動脈遮断時間はS群が有意に低値であった(p<0.05)が,他の因子に関しては両群間に有意差を認めなかった.小皮膚切開,胸骨部分正中切開によるMICSはASD,VSDにおいて時間因子以外は術者による術後経過の差を認めず,一部の症例を除けば標準術式として妥当であると思われた.
  • 林 和秀, 中野 秀昭, 大門 雅広
    2002 年 31 巻 1 号 p. 45-47
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    僧帽弁置換術に伴う左室破裂修復後の仮性左室瘤形成はまれであるが,その破裂部位,瘤形成部位が従来の報告とは異なった症例を経験したので報告する.症例は32歳男性.僧帽弁閉鎖不全症に対し胸骨下部T字状部分切開にて弁置換術施行.集中治療室2時間後に左室側壁破裂をきたし,心停止下にフェルト補強下に破裂部を縫合したのち,心膜パッチにて被覆逢着した.術後の胸部CT,左室造影にて左室前側壁に左冠動脈に沿って仮性左室瘤を認め,瘤形成部位から判断するに左室破裂は前交連付近の弁輪部から生じたものと推察された.胸骨下部部分切開,経心房アプローチによるためか,胸骨正中切開に比較し前交連付近視野が不良であり,弁切除や糸掛けのさいに心筋を損傷した可能性が考えられた.現在のところ左室瘤に起因すると思われる症状は認められておらず,外来にて厳重に経過観察する方針である.
  • 池淵 正彦, 田部 俊比古, 入江 博之
    2002 年 31 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.約6m高の屋根より転落し,深昏睡,ショックで入院した.頭蓋底骨折,右全肋骨骨折,血気胸を含む多発外傷を保存的に治療し,約2週間で意識障害と呼吸不全が軽快したが,経過中に下行大動脈瘤を生じ6.5cmに増大した.合併病変による危険を考え,ステントグラフト内挿術を施行し,瘤径は3ヵ月で4.6cmに縮小した.
  • 木村 真樹, 高木 寿人, 森 義雄, 宮内 忠雅, 広瀬 一
    2002 年 31 巻 1 号 p. 52-54
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性.織物作業中,右上腕に巻いていたビニール紐が織機に巻き込まれ,右上腕が絞扼,牽引された.直後より右前腕のしびれ,冷感を自覚した.近医で右橈骨動脈の拍動の触知不能に気付かれ,当科へ緊急入院となった.入院時の動脈造影で絞扼部位に一致し右上腕動脈の末梢側の完全閉塞を認め,同動脈の橈骨および尺骨動脈分岐部より末梢は側副血行で造影された.手術では上腕動脈の内膜は全周性に断裂し,同部位に血栓を形成していた.血栓を除去し,病変部位を十分に切除した.同一視野内に存在した尺側皮静脈をグラフトとして間置した.再建後の橈骨動脈の拍動は触知良好であった.動脈が強い力で牽引された場合には,全周性の内膜断裂が認められる.自験例は絞扼による直接的な外力に牽引が加わり内膜断裂を生じ,そのため動脈閉塞をきたしたと考えられる.
  • 矢野 光洋, 中村 都英, 松山 正和, 中村 栄作, 長濱 博幸, 鬼塚 敏男, 鍋島 一樹
    2002 年 31 巻 1 号 p. 55-57
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の女性.主訴は左上腹部痛.平成7年9月,呼吸困難にて入院し粟粒肺結核による呼吸不全と診断された.抗結核薬治療施行中に腹痛出現し,精査の結果,腎上部腹部大動脈および左腎動脈に嚢状動脈瘤を認めた.結核による感染性動脈瘤の診断のもと,部分体外循環下に動脈瘤を切除し,大動脈パッチ閉鎖術と左腎動脈再建術とを行った.病理組織検査で結核性動脈瘤と証明された.手術後も抗結核薬による治療を継続し,現在,再発を認めていない.結核性腹部大動脈瘤の手術時期および手術方法,補助手段について,文献的考察を加え報告する.
  • 大橋 壮樹, 坂本 宣弘
    2002 年 31 巻 1 号 p. 58-60
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は84歳の女性で,心室瘤にて外来通院中であったが,呼吸困難,チアノーゼを認め救急搬送された.ただちに気管内挿管を行い利尿剤,強心剤投与下にICUにて人工呼吸管理を行った.その後心室頻拍,心室細動を頻回にくり返すようになったためIntra-Aortic Balloon Pumping(IABP)を挿入したが,血行動態の悪化を認めたため,緊急手術を行った.手術は体外循環,心停止下にDor手術を行った.術後3日目にIABP抜去,8日目に抜管,経口摂取開始し,術後10日目にICUを退室した.その後リハビリを行い術後58日目に独歩退院となった.
  • 綾部 貴典, 福島 靖典, 帖佐 英一, 吉岡 誠, 鬼塚 敏男
    2002 年 31 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は30歳男性.発熱,咳嗽,呼吸困難を主訴に,入院精査した.心室中隔欠損(VSD, subarterial type)と大動脈弁の感染性心内膜炎(IE)を伴う今野分類I型のValsalva洞動脈瘤破裂と診断された.手術所見として,大動脈弁と肺動脈弁の感染性心内膜炎が認められたため,右Valsalva洞動脈瘤切除,大動脈弁,肺動脈弁切除とVSD周囲の右室壁の炎症性脆弱組織の切除術を施行した結果,VSDと右Valsalva洞切除部が連続した欠損孔を生じ,ウマ心膜パッチを用いて閉鎖を行った.大動脈弁置換術は機械弁(ATS18AP)の弁輪の一部をパッチに縫着し,肺動脈弁置換術は機械弁(ATS23A)を用い肺動脈弁位で施行した.術後13ヵ月を経過し,厳重なワーファリン管理下,感染や心不全徴候なく経過良好である.本症例はVSDから大動脈閉鎖不全症をきたし,Valsalva洞動脈瘤の形成と破裂,さらにIEが大動脈弁と肺動脈弁にまで波及し,心不全がより重症化したことが考えられた.重篤な心不全やIEが併発する前の早期にこのような適切な手術が不可避であることが示唆された症例と思われた.
  • 長谷川 朗, 恒元 秀夫, 野原 秀公
    2002 年 31 巻 1 号 p. 65-67
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    心臓原発の乳頭状弾性線維腫(papillary fibroelastoma: PFE)は比較的希な腫瘍であり,心エコーなどで偶然発見されることが多い.今回,検診で精査をすすめられ,心エコーを施行したところ発見された,大動脈弁原発のPFEを2例経験した.症例1は56歳,男性.1998年の検診で高脂血症を指摘され精査目的に当院受診.心エコーで大動脈弁に疣贅様の腫瘤を認めた.自覚症状はないものの,塞栓予防および確定診断のため手術適応とした.腫瘍は大動脈弁右冠尖に存在し,大動脈弁を傷つけることなく摘出しえた.症例2は75歳,女性.1999年の検診で心雑音を指摘され,近医受診.心エコーで大動脈弁に腫瘍を認め,手術目的に当院紹介された.腫瘍は大動脈弁無冠尖に存在し,腫瘍切除術を施行した.いずれも病理組織学的にはPFEであった.
  • 山内 正信, 花田 智樹, 野坂 誠士
    2002 年 31 巻 1 号 p. 68-70
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞後に偽性仮性心室瘤と心室中隔穿孔を合併した珍しい症例を経験したので報告する.症例は85歳の男性で,3ヵ月前に下壁心筋梗塞で入院加療した.今回,後壁急性心筋梗塞で,緊急入院となり,心臓カテーテル検査の結果,冠動脈三枝病変,心室瘤,心室中隔穿孔を認めたため,緊急手術を行った.心室瘤は右冠動脈後下行枝に沿って右側にあり大きさは4×1.5cmであった.心嚢と心外膜との癒着を認めず,仮性心室瘤は否定された.心室瘤を切開し,内腔より左室との交通口2×1.2cmと右室への破裂孔0.5cmを確認し,それぞれをパッチ閉鎖および直接閉鎖を行い,さらに大伏在静脈を用いて左前下行枝にバイパスをおいた.術後病理組織診断にて偽性仮性心室瘤と診断した.
  • 小長井 直樹, 矢野 浩己, 前田 光徳, 三坂 昌温, 松本 正隆, 工藤 龍彦, 石丸 新
    2002 年 31 巻 1 号 p. 71-73
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は持続する発熱を主訴とする31歳男性で,心エコー検査で感染性心内膜炎による僧帽弁閉鎖不全症と診断した.抗生物質投与でも炎症反応は消退しないため,活動期に僧帽弁置換術を行った.術前IVDSA検査にて中大脳動脈のmycotic aneurysmが疑われ,第1病日に施行した脳血管造影で未破裂動脈瘤を確認したため,緊急にて脳動脈瘤を切除した.神経学的合併症はなく,ICU滞在は4日間であったが,第12病日に上腸間膜動脈瘤の切迫破裂を併発した.炎症反応が低値であり,感染増悪の危険性は少ないと判断し,緊急にコイル塞栓術を施行し,治癒せしめた.
  • 茂木 健司, 沖本 光典
    2002 年 31 巻 1 号 p. 74-76
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は,50歳女性,十二指腸潰瘍により胃切除の既往がある.感染性心内膜炎による大動脈弁置換術後8ヵ月に,胃十二指腸動脈に生じた感染性動脈瘤が残胃へ穿破したが,救命しえた.調べえた限りでは,感染性心内膜炎に関連する胃十二指腸動脈由来の感染性動脈瘤の報告例は認められず,残胃に穿破した報告例は初めてである.感染性心内膜炎の患者では,全身の動脈に感染性動脈瘤を形成している危険性があり,術後の経過観察中の血管造影・造影CTが大切である.
  • 馬瀬 泰美, 河井 秀仁, 片山 芳彦, 木村 誠, 庄村 赤裸
    2002 年 31 巻 1 号 p. 77-80
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,急性心筋梗塞後左室自由壁破裂の3例に対し,手術を行い,2例を救命した.症例1は76歳女性で,左回旋枝#11の閉塞による広範後壁梗塞後の自由壁破裂である.完全体外循環・心停止下に後壁の亀裂を2枚のフェルトストリップで補強しながら直接閉鎖した.症例2は67歳男性で,左前下行枝#7の閉塞による広範前壁梗塞後の自由壁破裂である.PCPS補助・心拍動下に左室心尖部の亀裂を症例1と同様の方法で閉鎖した.症例3は57歳男性で,左回旋枝#13の閉塞による後壁梗塞後の自由壁破裂である.完全体外循環・心停止下に後壁の亀裂を症例1,2と同様の方法で閉鎖した.症例2,3は術前よりPCPSを導入し,血行動態が安定した状態で手術を行い救命できた.手術方法は,3例とも大きな針付糸を用い2枚のフェルトストリップで脆弱心筋を補強することで確実な止血が可能であった.
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