抄録
透析患者の表在化上腕動脈瘤5例に対し,瘤切除後の血行再建6回を行った.年齢は52~73歳,男性2例,女性3例であった.透析歴は1~10年であった.病変は未破裂動脈瘤3例,シャント吻合部瘤破裂1例,感染性瘤破裂1例であった.血行再建には全例で大伏在静脈グラフトを用いた.瘤切除部での置換術を3回,瘤切除部を迂回して肘関節屈曲部の尺側を通る経路での上腕動脈-尺骨(上腕)動脈バイパス術を3回施行した.全例で術後1~6ヵ月目(平均3.2ヵ月)にMRアンギオあるいは動脈造影にてグラフトの開存を観察した.結果は置換術を行ったうち2本のグラフト閉塞を認めた.バイパス術のグラフトは全例開存していた.置換術にてグラフト閉塞をきたした2例は感染性動脈瘤の破裂例と,術後に上肢の屈曲運動を激しく行っていた例であった.表在化上腕動脈瘤切除後の血行再建では,術後に肘関節の屈曲を激しく行うと予想される例や,感染を伴った瘤では尺側経路でのバイパス術が望ましいと考える.