日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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32 巻, 1 号
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  • 真鍋 晋, 外山 雅章, 河瀬 勇, 加藤 全功, 吉崎 智也, 呉 海松, 古谷 光久
    2003 年 32 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤(AAA),虚血性心疾患(CAD)両疾患26例に外科的治療を行った.平均年齢72.6±3.7歳,男性21例,女性5例,AAAの平均最大径は58.0±12.7mmであった.11例は一期的手術を,15例は二期的手術を行った.一期的手術群では4例でon pump CABGを,high risk症例3例を含む7例でoff pump CABGを行った.手術死亡はなく,術後急性腎不全,肺炎,呼吸不全を認めた.二期的手術群にも手術死亡なく,1例に急性腎不全を認めた.待機中のAAA破裂はないが,巨大瘤症例2例で切迫破裂により緊急手術を行った.全身状態良好例の一期的手術の治療成績は良好であり,積極的な施行が望ましいと思われた.High risk症例においても,AAA治療に緊急を要する例などでは,off pump CABGを用いた一期的手術は可能と思われた.
  • 足立 孝, 横山 正義, 小山 邦広, 池田 豊秀, 松本 卓子, 大貫 恭正
    2003 年 32 巻 1 号 p. 6-8
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    心筋電極縫着術では胸骨正中切開や剣状突起下切開などを必要とするが,われわれは左側小切開第五肋軟骨切除での心筋電極縫着術を1980年から2001年まで33例に行い,その方法および経過を検討した.手術は仰臥位で約6~8cmの皮膚横切開を第五肋間胸骨左縁におき,第五肋軟骨部を約5cm切除し右室前壁に心筋電極を縫着した.ペースメーカー本体は原則として上腹部皮下に植込んだ.左側第五肋軟骨切除で視野の得られなかった7症例では複数の肋軟骨切除を要した.電極縫着部位は右房壁6例,左室壁5例,右室壁28例であり,手術時間は平均150分,出血量は平均82mlであった.現在まで最長258ヵ月の術後追跡期間中,合併症として脳梗塞を1例に,小児期縫着例でのペーシング不全を1例に認めた以外は良好な結果であった.本法は心筋電極縫着術に対する一つの到達経路と考える.
  • 合併症予防対策を中心に
    吉鷹 秀範, 畑 隆登, 津島 義正, 松本 三明, 濱中 荘平, 末廣 晃太郎, 大谷 悟
    2003 年 32 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    弓部あるいは遠位弓部大動脈瘤の18例に胸骨正中切開下,経大動脈的にステント付き人工血管(SG)内挿術(OSG)を行った.脳保護は逆行性脳灌流法あるいは脳分離体外循環(弓部3分枝送血)を用いた.SG内挿中は瘤内あるいは下行大動脈内は血液あるいは二酸化炭素を満たしながら挿入した.また,SG挿入後にバルーンでSGを閉塞させた状態での大腿動脈送血は行わなかった.結果は周術期心筋梗塞と肺炎でそれぞれ1例を失った.また,2例において中枢側エンドリークを認め再手術を要した.エンドリークはいずれもSG中枢側吻合を粥状変化の強い弓部において後壁inclusion法で行ったために発生.弓部全置換を追加し,エンドリークは消失した.脳脊髄神経系合併症はまったく認めなかった.OSGではエンドリークあるいは脊髄神経障害といった合併症に対する対策を講じる必要がある.しかし注意深く手術を行えば十分に有用な術式の一つとなりうる.
  • 脳保護,術式について
    鈴木 友彰, 高森 督, 安田 冬彦, 近藤 智昭, 岡部 学
    2003 年 32 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    当科で行っている弓部大動脈瘤手術の脳保護法,末梢吻合における工夫について報告する.対象は1997年2月から2001年10月までに施行した弓部大動脈瘤手術32例.疾患の内訳は真性瘤18例,解離性大動脈瘤13例,仮性瘤1例で,緊急症例を9例含む.脳保護法は順行性脳灌流(SCP)と逆行性脳灌流(RCP)を組み合わせて用いている.つまり循環停止後,瘤を切開すると同時にRCPを開始,病変を検索し1分枝以下の再建ならRCPのまま手術を進め,2分枝以上の再建が必要ならRCP下に血液を逆流させながら弓部分枝にカニュレーションしSCPに移行する.また末梢側吻合の工夫として,急性解離ではadventitial inversion法,真性瘤では自己心膜を大動脈内面に補填することで止血の補助とした.最近の10症例ではカフ付きグラフト法を用いており,これにより手技的に非常に容易となり,すばやく確実な吻合が可能である.以上の方針の結果,術後覚醒時間8.7±1.4時間,病院死2例(6.3%),脳合併症2例(6.3%)であった.弓部大動脈手術の手術成績向上には安定した脳保護法の確立と,迅速で確実な末梢吻合を行うことにある.今回報告した脳保護法,末梢吻合における当科の方法は手術成績からみて有用である.
  • 組織親和性および吸収性
    冨澤 康子, 小森 万希子, 高田 勝美, 西田 博, 遠藤 真弘, 黒澤 博身
    2003 年 32 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    コラーゲン製止血材の組織親和性および吸収性を評価するために創傷治癒モデルにおいて生体顕微鏡下に観察した.3種類の市販のコラーゲン製止血材,綿状(Integran®),微細線維性(Avitene®)とシート状(TachoComb®)を検討した.家兎の耳介に観察窓を作成し約0.5mgの各試料を留置した(Integran n=8,Avitene n=6,TachoComb n=6).肉眼的および生体顕微鏡学的観察を5週目まで施行した.留置した試料は肉眼的に,Integran群では2週目まで,Avitene群およびTachoComb群では4週目まで観察できた.Integran群では血管新生は速やかに起こり顕微鏡下に綿の繊維上に付着している細胞,および繊維間に侵入している毛細血管が観察され,5週目には6/8匹において観察窓内の脈管構造が完成した.TachoComb群では2週目には試料周囲の浸出液に向かって新生血管は促進したが,Avitene群では浸出液に新生血管は向かわなかった.5週目においてもAvitene群とTachoComb群の両群では浸出液あるいは感染により窓内の脈管構造は完成せず,試料で満たされていた場所は浸出液で満たされているか,空洞が形成されていた.コラーゲン製止血材の形状は宿主の治癒過程に及ぼす影響が大きく,組織親和性,組織治癒および材料の吸収過程には優劣があることが明らかになった.
  • 尺側経路上腕動脈-尺骨(上腕)動脈バイパス術の有用性について
    長阪 重雄, 松田 昌浩, 桑田 俊之
    2003 年 32 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    透析患者の表在化上腕動脈瘤5例に対し,瘤切除後の血行再建6回を行った.年齢は52~73歳,男性2例,女性3例であった.透析歴は1~10年であった.病変は未破裂動脈瘤3例,シャント吻合部瘤破裂1例,感染性瘤破裂1例であった.血行再建には全例で大伏在静脈グラフトを用いた.瘤切除部での置換術を3回,瘤切除部を迂回して肘関節屈曲部の尺側を通る経路での上腕動脈-尺骨(上腕)動脈バイパス術を3回施行した.全例で術後1~6ヵ月目(平均3.2ヵ月)にMRアンギオあるいは動脈造影にてグラフトの開存を観察した.結果は置換術を行ったうち2本のグラフト閉塞を認めた.バイパス術のグラフトは全例開存していた.置換術にてグラフト閉塞をきたした2例は感染性動脈瘤の破裂例と,術後に上肢の屈曲運動を激しく行っていた例であった.表在化上腕動脈瘤切除後の血行再建では,術後に肘関節の屈曲を激しく行うと予想される例や,感染を伴った瘤では尺側経路でのバイパス術が望ましいと考える.
  • 山田 知行, 山里 有男
    2003 年 32 巻 1 号 p. 28-30
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    遠位弓部大動脈瘤に対して,確実な吻合,脳合併症回避,血液凝固異常軽減を目的に,左前腋窩開胸から上行大動脈送血,中等度低体温,選択的脳灌流法を用いて,人工血管置換術を行った.対象は真性動脈瘤10例,うち肺内破裂2例.男6,女4.平均年齢74歳(70~79).平均手術時間は5時間12分(4:42~5:59),人工心肺時間129分(105~160),最低膀胱温25.6℃(23.6~27.6)であった.多発性脳塞栓症を1例に認め,遠隔死亡となったが,9例は重篤な合併症なく退院した.本術式は視野良好,吻合止血が容易であり,良好な結果が得られた.
  • 松本 春信, 土屋 幸治, 中島 雅人, 佐々木 英樹, 日比野 成俊, 山本 君男
    2003 年 32 巻 1 号 p. 31-33
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は63歳女性.甲状腺腫瘍手術のさい,気管切開施行された.平成12年12月25日,Stanford A型急性大動脈解離(早期血栓閉塞型),心タンポナーデにて当院へ搬送された.保存的に治療したが,発症後20日目のフォローアップCTにて,上行大動脈の拡大および偽腔開存を認めたため手術を施行した.気管切開口よりスパイラルチューブを挿入しドレープで固定後手術を開始した.Y字型皮膚切開+胸骨全縦切開で心臓へ到達した.解離は右腕頭動脈起始部までで留まっており,上行部分弓部大動脈置換(24mm Hemashield)を施行した.術後感染も認めず術後第19病日に退院した.気管切開口を有する症例に対する心臓血管手術において,通常の胸骨正中切開によるアプローチは縦隔洞炎の発生が危惧されるが,Y字型皮膚切開+胸骨全縦切開によるアプローチは本症例において有効であった.
  • 三宅 隆, 正木 久男, 森田 一郎, 田淵 篤, 石田 敦久, 宍戸 英俊, 種本 和雄
    2003 年 32 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    III b型急性大動脈解離の保存的治療中に解離腔血栓への細菌感染をきたし,緊急手術を施行した症例を経験したので報告する.症例は62歳の男性で胸痛を訴え近医に入院しCTで急性大動脈解離と診断され当院へ紹介された.III b型解離で保存的治療を行うが発熱と炎症反応が増強し,血液培養でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出された.抗生剤は効果なく感染制御は不良であった.CTでは経時的に解離腔の血栓化と増大,解離腔に接する肺の炎症性変化が進行し,解離腔のMRSA感染によう大動脈瘤と診断した.24日目に遠位弓部から下行大動脈置換術と大網充填を行った.解離腔の血栓・膿汁はMRSA陽性であった.診断にはCTが有用であり,治療は解離腔内感染巣へ抗生剤の効果がなく急速な瘤増大から破裂をきたすため感染の沈静に時間をかけず早期の外科的治療が必要である.
  • 角岡 信男, 河内 寛治, 浜田 良宏, 中田 達広, 中村 喜次, 宮内 勝敏, 今川 弘
    2003 年 32 巻 1 号 p. 38-40
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    胸部下行大動脈瘤に対しステントグラフトを留置したが1年半で再拡大した.エンドリークは認めないが,血管造影にて中枢末梢ともにランディングが短くなり,経食道エコーでは瘤に対して人工血管を介し圧が伝播していた.左心バイパス下に人工血管置換を施行,そのさいESPが消失し急遽高位肋間動脈再建,髄液ドレナージを施行し対麻痺を防げた.
  • 常深 孝太郎, 澤田 吉英, 月山 芙蓉, 近藤 敬一郎, 佐々木 進次郎
    2003 年 32 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Cabrol手術後遠隔期に急性心筋梗塞にて発見された左冠動脈口-小人工血管吻合部狭窄に対し,心拍動下冠動脈バイパス術を施行したMarfan症候群の1例を経験した.症例は31歳女性.29歳時,Cabrol手術を施行され,以後経過は良好であった.術後1年7ヵ月目に胸痛をきたし,急性心筋梗塞の診断で入院した.心臓力テーテル検査にて左冠動脈口-小人工血管吻合部に90%狭窄を認めたため,心拍動下冠動脈バイパス術(左内胸動脈(LITA)-左前下行枝(LAD)吻合)を施行した.吻合にあたり,心臓が心尖側寄りに偏位し,また心尖部の癒着の剥離困難が予想されたため,LITAの走行を考慮し,心膜をLITA-LAD吻合予定部上で径3cmの円状に切除し,同部からLITAを通し吻合を行う工夫を加えた.術後造影では左冠動脈口-小人工血管吻合部は閉塞していたが,LITAの血流は良好で前下行枝,回旋枝への血流は十分に保たれていた.
  • 安里 満信, 長谷川 伸之, 鈴川 正之, 大木 伸一, 上沢 修, 布施 勝生
    2003 年 32 巻 1 号 p. 45-47
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の男性.左大腿の疼痛,腫脹を主訴に前医より急性動脈閉塞症として紹介された.入院時,大腿部の深部静脈血栓症と診断し前医よりの抗凝固療法を継続した.その3時間半後,突然意識レベルが低下し,ショック状態となった.血管エコー所見より末梢動脈瘤破裂を考え,IA-DSAを施行して左膝窩動脈瘤破裂と診断した.瘤切除と大伏在静脈による緊急血行再建術を施行した.膝窩動脈壁と創部の培養から肺炎桿菌が検出され,第5病日から感受性のある抗生剤に変更し,感染性心内膜炎の抗生剤投与に準じて6週間投与し,菌が創部にいなくなったことを確認後終了した.術後第61病日全身状態は改善し転院した.
  • 吉田 秀明, 塚田 守雄, 熱田 友義
    2003 年 32 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,女性.スキー転倒で左大腿骨骨幹部を骨折し,4日後に整形外科で髄内釘による固定術を受けた.その18日後に疼痛を伴う拍動性腫瘤が出現し,動脈瘤が疑われ当科に紹介された.動脈造影で,浅大腿動脈中央部に直径約6cmの動脈瘤が認められた.瘤切除,動脈端々吻合術を施行し,治癒退院した.骨折後の遅発性合併症として仮性動脈瘤は,その多くは骨と動脈が近接した部位に発生しており,浅大腿動脈中央部の仮性動脈瘤の報告はきわめて少ない.骨折から診断まで5~8週要していること,診断の契機は,動脈瘤の局所所見のほかに,原因不明の貧血・出血による症状がみられていること,末梢の動脈拍動は保たれていることが特徴である.治療は本症の動脈瘤が仮性瘤であるため瘤切除のうえ血行再建が好ましい.転位の大きい骨折では,動脈と骨が離れている部位においても希ながら仮性動脈瘤が発生しうることを念頭においた経過観察が肝要である.
  • 宮原 健, 前田 正信, 酒井 喜正, 櫻井 一, 村山 弘臣, 長谷川 広樹
    2003 年 32 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    70歳,男性.1995年,縦隔腫瘍(悪性リンパ腫)摘出術,2年後,右鎖骨上リンパ節腫脹に対し総線量65Gyの照射を行った.2000年1月,放射線皮膚潰瘍に対する再建手術中,腕頭動脈から出血し,人工血管による再建を施行した.術後DSAでは異常は認めず.2000年8月,術創からの出血および右頸部拍動性腫瘤にて当院へ救急搬送され,胸部CTおよびDSAにて腕頭動脈人工血管吻合部仮性動脈瘤切迫破裂と診断され,緊急手術を施行した.両側外頸動脈を大伏在静脈でバイパス後,胸骨再々正中切開を行い,左総頸動脈からの選択的脳灌流下に人工血管除去と仮性瘤の切除を行った.DSAにてグラフトの良好な開存および頭蓋内の血管の描出を確認し,何ら神経学的合併症なく軽快退院した.人工物を用いず,頸部血管再建を先行させた術式は安全かつ有用であった.
  • 北野 満, 岡 藤博, 村田 眞哉
    2003 年 32 巻 1 号 p. 56-58
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性,咳嗽と呼吸困難で来院し肺炎と診断され治療されていたが7日後,著明な心雑音聴取とともに急激に大量の胸水貯留と肺うっ血を呈した.人工呼吸管理などで症状安定したのち,胸部CT検査および心臓カテーテル検査にて交通性の動脈管動脈瘤と診断された(肺体血流比:4.18).動脈瘤は径約10.5cmと巨大で周囲の肺動脈,気管支を圧排していた.手術待機中に突然の喀血と呼吸困難を発症し,緊急手術を施行した.左第3肋間開胸で,部分体外循環下に最大径12cmの動脈管動脈瘤を切開し,肺動脈側および大動脈側の交通孔をポリエステルパッチで閉鎖した.術後経過は良好で27日目に退院した.
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