抄録
症例は64歳男性で,急性心筋梗塞に伴う高度心不全の診断で当院へ搬送された.心エコー検査で,僧帽弁後乳頭筋断裂による急性僧帽弁閉鎖不全と診断した.搬送時よりショック状態にあり,腎機能低下がみられたため冠動脈造影を施行せず,大動脈内バルーンパンピング駆動下に緊急手術を施行した.手術時,後乳頭筋の僧帽弁前尖が付着する筋束に完全断裂がみられ,高度の前尖逸脱を認めた.前尖を切除し後尖は温存してSt. Jude Medical®(29mm)弁で僧帽弁を置換した.術後急性期に心室性不整脈が多発し管理に難渋したが,その後は著変なく経過した.退院前に施行した冠動脈造影では有意の狭窄を認めなかった.僧帽弁乳頭筋断裂により重篤な心不全を呈する症例は,心エコー検査で診断がつきしだい,早急に手術を行うことが救命には重要である.