日本心臓血管外科学会雑誌
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緊急手術により救命しえた心筋梗塞後僧帽弁乳頭筋完全断裂の1例
過去10年間の本邦報告例を含めて
阪口 正則末広 茂文柴田 利彦服部 浩治平居 秀和藤井 弘通青山 孝信生田 剛士
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2003 年 32 巻 2 号 p. 98-101

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抄録
症例は64歳男性で,急性心筋梗塞に伴う高度心不全の診断で当院へ搬送された.心エコー検査で,僧帽弁後乳頭筋断裂による急性僧帽弁閉鎖不全と診断した.搬送時よりショック状態にあり,腎機能低下がみられたため冠動脈造影を施行せず,大動脈内バルーンパンピング駆動下に緊急手術を施行した.手術時,後乳頭筋の僧帽弁前尖が付着する筋束に完全断裂がみられ,高度の前尖逸脱を認めた.前尖を切除し後尖は温存してSt. Jude Medical®(29mm)弁で僧帽弁を置換した.術後急性期に心室性不整脈が多発し管理に難渋したが,その後は著変なく経過した.退院前に施行した冠動脈造影では有意の狭窄を認めなかった.僧帽弁乳頭筋断裂により重篤な心不全を呈する症例は,心エコー検査で診断がつきしだい,早急に手術を行うことが救命には重要である.
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