日本心臓血管外科学会雑誌
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冠動脈病変を合併した腹部大動脈瘤手術
同時手術,2期手術の選択
田中 弘之成澤 隆森 貴信桝田 幹郎岸 大次郎鈴木 隆高場 利博
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2003 年 32 巻 4 号 p. 197-200

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抄録

腹部大動脈瘤(AAA)患者に,非侵襲的検査で冠動脈病変(CAD)の評価を行った.また両疾患を合併する場合,それぞれの重症度によって同時手術,2期手術を選択した.平成8年から13年まで当科で施行したAAA待機手術36例を対象とした.薬物負荷心筋シンチにてCADがあると考えられた症例にのみ冠動脈造影(CAG)を施行した.8例に有意なCADが認められた.同時手術症例は4例で,すべて心拍動下冠動脈バイパス(OPCAB)を併施した.2期手術症例は4例で,冠動脈バイパス(CABG)1例,OPCAB1例,PTCA2例を先行した.AAA手術のみが施行されたのは28例であった.同群に心事故,心臓死はなかったが,2例の死亡例があった(出血1例,消化管穿孔1例).CAD合併8例で同時手術群の1例が筋腎代謝性症候群(MNMS)で死亡したが,ほかの7例は早期に社会復帰可能となった.非侵襲的検査を用いることで全例にCAGは必要ないと考えられた.CADを合併する場合,その重症度に合わせて同時手術,2期手術を選択するという方針は妥当であると考えられた.

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