日本心臓血管外科学会雑誌
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真性瘤を合併した大動脈解離症例の検討
塚本 三重生進藤 正二尾花 正裕秋山 謙次塩野 元美根岸 七雄
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2003 年 32 巻 4 号 p. 201-205

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抄録

1999年1月1日から2001年12月31日までに当科で経験した大動脈解離症例152例(Stanford A型77例,Stanford B型75例)のうち真性大動脈瘤の合併は25例(16.4%)にみられ,A型解離が10例(13.0%),B型解離が15例(20.0%)であった.発症年齢は71.4±9.8歳であり,真性大動脈瘤を合併した大動脈解離症例の手術では高齢であることを考慮して治療方針,術式を決定する必要があると考えられた.大腿動脈送血で体外循環を行うさいは,瘤を介して脳へ血液が送られることが多いため,人工心肺開始時に順行性送血に比べて送血を緩徐に行い,また心室細動となったのちは灌流圧を低下させるようにし,粥腫が脳血管へ流れ込むのを予防,さらに末梢側吻合後は送血分枝から送血することなどが重要であると思われた.また紡錘状大動脈瘤が解離のエントリーとなったのは152例中3例(2.0%)で,大動脈解離が大動脈瘤に接して存在した11例中2例の嚢状瘤は解離の進行を停止させたが,9例の紡錘状瘤は停止させることはなく,大動脈瘤は形態により解離に及ぼす作用が異なると考えられた.大動脈瘤と大動脈解離が異所性に併存する症例においても再解離により瘤内に解離が進入することがあり,大動脈解離を保存的に治療する場合であっても真性瘤の手術時期の決定は慎重に行うべきである.

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