日本心臓血管外科学会雑誌
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高齢者のStanford A型急性大動脈解離に対する治療
塚本 三重生進藤 正二尾花 正裕秋山 謙次塩野 元美根岸 七雄
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2003 年 32 巻 4 号 p. 209-214

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抄録

1999年1月1日から2001年12月31日に当科で治療を行った発症48時間以内のStanford A型急性大動脈解離症例を70歳未満の症例と70歳以上の症例に分け,外科治療と保存的治療の成績および死亡原因を比較検討した.総症例数は74例で年齢は33~88歳(66.5±11.9歳),男:女=39:35であった.真性大動脈瘤を70歳以上で21.1%に合併しており,70歳未満の5.6%と比較して有意に高率であった.治療成績は70歳未満では36例中27例(75.0%)が救命されたのに対して,70歳以上では38例中18例(47.4%)のみの救命であった.外科手術は62.2%に相当する46例に対して行われ,手術施行率は70歳未満で69.4%,70歳以上で55.3%で有意差はなく,手術死亡は70歳未満で25例中3例(手術死亡率12.0%)に対して,70歳以上では21例中9例(手術死亡率42.9%)と有意に高率であった.手術を行わなかった28例の死亡は70歳未満で11例中6例(死亡率54.5%),70歳以上では17例中10例(死亡率58.8%)と有意差はなく,いずれも50%をこえ高率であったがそのうち9例は手術準備中に破裂し死亡した症例であった.高齢者ではさまざまな合併症の危険性が高く手術成績が不良であることから慎重な治療方針の決定が重要であると考えられ,手術を行う場合は可及的速やかに手術を行い,短時間で手術を終えられるような術式の選択が重要である.

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