日本心臓血管外科学会雑誌
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心大血管術後に発症したmyonephropathic metabolic syndrome7例の検討
藤井 弘通大橋 博和堤 泰史河合 隆寛月岡 俊英大中 正光
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2003 年 32 巻 4 号 p. 230-233

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抄録

開心術,大動脈解離術後のmyonephropathic metabolic syndrome (MNMS)の合併は,その手術の予後を大きく左右する.そこで,当院において心大血管術後にMNMSを発症した7例につき検討した.対象は43歳から81歳の男性が5例,女性が2例で,疾患の内訳は心筋梗塞が4例,大動脈解離が3例(Stanford A/B=2/1)であった.心筋梗塞例ではIABP・PCPSが,大動脈解離例では解離による下肢虚血がMNMSの原因であり,当施設でのそれぞれの発症率は1.4%,4.2%であった.施行手術はCABGが4例,上行弓部大動脈人工血管置換術+CABGが2例,左腋窩-大腿動脈バイパス術1例であった.4例が死亡,うち3例は心筋梗塞例で,1例は大動脈解離発症18.5時間後に血行再建を行った症例であった.MNMSの対処法としてはIABP・PCPS抜去可能例では抜去し,下肢灌流法を1例に,血液透析濾過を5例に行った.IABP,PCPS抜去不能例では,人工血管を間置して挿入,送血管の部位を変更するなどの処置が必要である.大動脈解離においては合併症の1つとして考え,早急な血行再建または四肢切断を考慮すべきである.臨床症状と血液検査から術後早期にMNMSを察知し,血液透析濾過を早急に導入することが肝要である.

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