日本心臓血管外科学会雑誌
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左室および両室ペーシングの有効性に関する臨床的検討
坂本 滋松原 純一松原 寿昭永吉 靖弘西澤 永晃庄野 真次神野 正明武内 克憲野中 利通野口 康久
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2003 年 32 巻 4 号 p. 234-239

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抄録

心筋電極法で左室および両室ペーシングを施行し,その有効性に関して検討した.2002年4月までに11症例に左室および両室ペーシングを施行した.診断は,完全房室ブロック2例,洞結節不全症候群1例,除脈性心房細動1例,ICM4例,DCM3例であった.植え込み方法は,全身麻酔下に左第5肋間小開胸法(7例)と開心術例に対しては胸骨正中切開法(4例)で施行した.使用したペースメーカーはDDDRとSSIRで両室ペーシングを行う場合は,ジェネレーターの心室側リードをYアダプターにて2極とし,両室に植え込んだ.臨床症状は,術前NYHA3.7±0.5度から術後1.5±0.7度に有意に改善した(p<0.001).心係数(CI)は,術前1.9±0.4l/min/m2から術後3.2±0.4l/min/m2(p<0.05),肺動脈楔入圧(PCWP)は,術前16.3±2.4mmHgから術後11.9±2.1mmHg(p<0.05)と有意に改善した.心内電位は,左心房電位3.3±1.4mV,左心房閾値(PW:0.45msec)1.0±0.7V,左室電位13.9±4.4mV,右室電位5.9±2.5mV,左室閾値(PW:0.45msec)1.0±0.4V,右室閾値(PW:0.45msec)0.9±0.5Vと左室電位が高値を示した.本方法は,現時点では心内膜電極法に比較すると全身麻酔のリスクはあるものの臨床症状と行動態の改善は良好であり,心不全患者のQOL向上に有効な方法と考えられた.

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