抄録
慢性透析中に高度の弁輪石灰化による僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症(MSR)をきたした1例を経験したので報告する.症例は53歳,女性.1993年より糖尿病性腎症で慢性血液透析を施行している.1999年になり心不全をくり返し,心臓超音波検査にて僧帽弁に高度の石灰化を認め,このためにMSR(MVA 1.10cm2)をきたしていた.同年7月13日僧帽弁置換術(MVR)を施行した.僧帽弁輪から左室乳頭筋にかけて高度の石灰化を認め,左室内腔の石灰化病変を切除し,左室内腔形成に自己心膜を用い,27mm Carbo-Medics弁(C-M弁)にてMVRを施行したが,敗血症から多臓器不全(MOF)をきたし,1999年10月25日死亡した.病理解剖所見では補強した自己心膜により左室内腔は良好な形態を保っており,C-M弁は弁輪に良好に縫着されていた.