8年間に手術を受けた腹部大動脈瘤139例(非破裂107例,破裂後32例)を,患者年齢の高齢化に注目して分析した.また,同時期に破裂性腹部大動脈瘤と診断された,非手術例10例を分析した.手術例では80歳未満100例と80歳以上39例との間に,手術死亡率は待機手術(0%対0%),破裂後手術(28.5%対13.3%)とも差がなかった.しかし,破裂後手術は各群に16例あり,80歳未満群の16.0%に対して,80歳以上では41.0%を占め,有意に高率だった.破裂以前に動脈瘤と診断されていたのは10例のみであり,破裂後手術では,未診断の場合より死亡率は低い傾向にあった.同期間中に,破裂後蘇生困難な心肺停止4例,主として他疾患による衰弱を理由として4例を手術非適応とし,ほかに2例が剖検時に破裂による死亡と診断された.高齢者の腹部大動脈瘤では,若年者と同様に待機手術で安全に手術しうることから,破裂以前に発見する啓蒙と積極的治療が肝要である.破裂後に手術非適応とするさいは,破裂前後の診療情報を基に,慎重に決定すべきである.