日本心臓血管外科学会雑誌
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Stanford A型急性大動脈解離に対する上行弓部置換術後吻合部再手術の2症例
桜井 学高原 善治茂木 健司
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2004 年 33 巻 2 号 p. 110-113

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抄録
Stanford A型急性大動脈解離は比較的安定した成績を得られるようになってきたが,近年,GRF glueによる問題が生じ注目されてきている.今回,われわれはStanford A型急性大動脈解離に対し上行弓部置換術を施行し,術後3~5年目に吻合部再解離,仮性瘤を生じた2症例を経験したので報告する.症例1は71歳,男性.A型急性大動脈解離に対し上行弓部置換術施行後3年目より吻合部2ヵ所に仮性瘤,下行大動脈に再解離を認め,人工血管部分再置換術を施行した.症例2は67歳,男性.同様にA型急性大動脈解離に対し上行弓部置換術施行後5年目に大動脈基部再解離を生じ,modified Bentall手術を施行した.2症例とも仮性瘤,再解離発生部位が初回手術時のGRF glue使用部位に一致していたため,要因の一つとしてGRF glueの関与を疑った.急性大動脈解離の初回手術におけるGRF glueの使用については合併症の危険も考慮したうえでの慎重な使用が望まれ,GRF glueを使用した大動脈壁は正常な波状構造を失っているため,手術近接期だけでなく,長期遠隔期にも瘤形成や再解離を念頭においた経過観察が必要であると思われた.
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