日本心臓血管外科学会雑誌
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急性大動脈解離に伴う腎不全に対し内膜開窓術が奏効した1例
村山 順一伊藤 翼夏秋 正文岡崎 幸生古川 浩二郎大坪 諭力武 一久
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2004 年 33 巻 2 号 p. 106-109

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抄録
症例は72歳,女性.逆行性急性A型解離に対し上行置換術施行後,42日目に背部痛にて発症した.CT上B型解離を認め,腹部では真腔は狭小化していた.DSAでは腹腔動脈,上腸間膜動脈は真腔より分岐していたが,両側腎動脈は描出されなかった.急性腎不全に対し発症6日目に腎動脈下腹部大動脈内膜開窓術を施行した.正中切開にて開腹し,腸管虚血の所見がないことを確認した.腎動脈下腹部大動脈を遮断後離断し,中枢側内膜を大きくU字型に切除した.末梢側は偽腔を閉鎖し,中枢側との間は人工血管にて置換した.術中epiaortic echoにより,内膜開窓作製後の真腔拡大の様子を観察しえた.術後しばらくの間持続血液濾過(CHF)を行ったが,腎機能改善に伴い離脱できた.術後CTでは真腔は拡大しており,左腎の部分的な梗塞以外,他臓器の虚血を示唆する所見は認めなかった.DSA上,両側腎動脈は内膜開窓部を介した真腔より描出されていた.術後1年10ヵ月経過した現在,解離腔の拡大や新たな虚血の所見を認めていないが,今後も厳重な経過観察が必要である.
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