日本心臓血管外科学会雑誌
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閉塞性睡眠時無呼吸症候群を合併した急性大動脈解離の検討
住吉 辰朗石原 浩内田 直里小澤 優道
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2004 年 33 巻 3 号 p. 152-157

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抄録

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome,以下,OSAS)とは睡眠時にくり返し出現する上気道の閉塞により,激しいいびき,無呼吸発作,日中の過眠傾向などの症状を呈する疾患であり,重症のOSASほど心血管合併症による死亡率が増加するといわれている.今回当科で加療した急性大動脈解離症例のうちOSASと診断された5例について報告した.症例の内訳は,DeBakey I型が2例(症例1,2),III b型が3例(症例3,4,5).OSAS合併症例5例のうち4例に臓器虚血を認め,その内訳は腎臓虚血1例(症例1),下肢虚血2例(症例3,4),腹部臓器および脊髄複合虚血1例(症例5)であった.症例4は下肢虚血,全周性解離による真腔高度狭小化をきたした症例であったが,降圧療法にOSASの治療である夜間持続陽圧人工呼吸を組み合わせることにより偽腔血栓化を認めた.症例5も全周性解離症例であり,発症4日目に腹部臓器虚血を認めた.血管造影で血栓化した偽腔による,腹腔動脈および上腸間膜動脈根部の真腔圧排を認めたため腹腔動脈にステントを留置し救命しえた.OSAS患者に急性大動脈解離を発症した場合,真腔狭小化,臓器虚血といった非常に危険性の高い症例が多かった.その要因としてOSASに伴うアシドーシス,低酸素血症による高血圧が関与していると考えられた.また,OSASにおける無呼吸発作時には胸腔内圧が20~70mmHg変動するといわれており,この大きな圧変動が直接胸部大動脈へのストレスとなるのではないかと推測した.

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