超低体温循環停止手術では,中等度低体温手術に比べて術中の出血量が多く,血小板をはじめとする血液製剤の使用量も多い傾向がある.そこで低体温そのものが血小板機能を低下させる一因になっていると仮定し,超低体温手術と中等度低体温手術における血小板機能を比較した.対象は直腸温20℃で循環停止,順行性脳分離体外循環を行った大血管手術16例(低温群)と,ほぼ同時期に直腸温30℃以上で3時間以上体外循環を行った心臓手術20例(コントロール群)とした.体外循環時間ごとに血小板数,α顆粒の放出,マイクロパーティクルの形成そして血小板の凝集を比較した.ヘマトクリット値で補正した血小板数は,体外循環2時間目以降,低温群で有意に低下した(3.7×10
4/μl vs.11.4×10
4/μl,
p<0.0001).α顆粒の放出を示すGMP-140(P-セレクチン)陽性血小板の割合は,体外循環1時間以降有意に増加した(11.8% vs.8.3%,
p=0.0091).マイクロパーティクルの比率は体外循環2時間以降低温群で増加し(24.8% vs.10.5%,
p<0.0001),血小板凝集塊の割合も有意に増加した(3.4% vs.1.4%,
p=0.0058).血液温が一過性に15℃以下になった低温群では,血小板数の減少とともにその活性化が起こり,復温後も回復しなかった.超低体温循環停止を行う手術では,冷却に時間がかかっても最低送血温を15℃以上に保つことが大切である.
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