日本心臓血管外科学会雑誌
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慢性大動脈解離に対するパッチ形成術の1治験例
秋島 信二桜井 淳一軸屋 智昭
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2004 年 33 巻 3 号 p. 178-181

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抄録

症例は72歳,女性,2001年1月胸痛を主訴に入院したが,確定診断にいたらず,外来経過観察としていた.同年10月15日,再び胸痛を主訴に救急車にて来院した.CT上,上行大動脈に限局した大動脈解離を認めたため,DeBakey II型の急性大動脈解離と診断した.緊急手術を行い,上行大動脈胸側の偽腔を開放したところ,外膜,flapは肥厚し,比較的安定した状態を呈していた.Entryは1つで,外膜~flap移行部は癒着して堅固な組織となり,それより背側は解離を認めない健常大動脈壁と考えられた.この時点で,急性大動脈解離(DeBakey II型)の慢性期像と診断した.この症例に対し,解離部以外は健常大動脈壁であったこと,限られた解離範囲で上行大動脈人工血管置換を行った場合,背側の置換距離が約1cm余りとなり,縫合,止血操作に難渋すると考えられたことなどから,woven Dacron graftを開放したパッチを用い,解離部切除,大動脈パッチ形成術を行った.術後2年の時点で大動脈の拡張,再解離は認めず,良好な術後経過である.慢性期大動脈解離において,今回のような条件のもとでは,解離部切除,大動脈パッチ形成術を手術方法の選択肢の一つとして考えることができるといえる.

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