抄録
Minimary invasive cardiac surgery (MICS)による大動脈弁置換術(AVR)においては一般的にupper ministernotomyが選択されることが多い.しかし,retograde cardioplegia cannulaが挿入できないことなどがある.当科でCTをもとに検討したところ日本人の大動脈弁の位置はlower ministernotomyでも手術可能な場合が多いことがわかった.そこでこの2種のアプローチの有用性について検討した.1997年1月から2002年3月までに大動脈弁疾患に対しMICSによるAVRを施行した68症例を対象としupper ministernotomy施行症例をU群,lower ministernotomy施行症例をL群とした.Retrograde cardioplegiaは一般にAVRでの心筋保護法として頻用されている.L群は心筋保護および術野確保の点でもfull sternotomyへの移行した症例はなく有効であった.L群ではMAZE手術も施行でき大動脈遮断時間,人工心肺時間,手術時間,出血量,そのほかの因子でも有意差を認めなかった.Lower ministernotomyはupper ministernotomyと比較しMICS AVRにおいてretrograde cardioplegiaによる心筋保護および術野確保に有効であった.