2004 年 33 巻 6 号 p. 399-402
大動脈解離は家族内に多発性に発生することは一般的には希であるが,なかでもMarfan症候群にみられることが知られている.しかし,最近ではMarfan症候群の身体的特徴を有さない家系においても家族性大動脈解離の報告がみられる.われわれは1家系の4症例に発症した家族性大動脈解離を経験した.母親とそのすべての子供,2世代にわたって大動脈解離が発症した.全例とも結合組織疾患を示唆する身体的特徴は有さず,手術が行われた2例の病理学的所見では嚢胞性中膜壊死の所見は認めなかった.家族内に高率に高血圧を認めた.家族内に多発する大動脈解離は結合組織疾患が根底にあると考え,Marfan症候群に特徴的な所見がなくても,発症者はもとより症状の顕性化していない患者を早期に発見することが重要であり,結合組織疾患に準じた経過観察が重要と考えられた.