抄録
症例は67歳,男性.1984年に大動脈弁閉鎖不全にて大動脈弁置換術を施行されている.2003年5月15日,胸痛が出現し,心電図にてV4~6にST低下を認め,冠動脈造影検査を行った.有意狭窄を認めず,心臓超音波,CT検査で異常所見がなかったことから,翌日退院となった.4日後,突然の胸痛が出現し,意識消失をきたし,当院を受診した.心臓超音波,CT検査にて左室側壁に破裂孔(約10mm)を認め,左室自由壁破裂(blow-out型)と診断された.ICUにてショック状態となり,経皮的心肺補助(PCPS)を装着し緊急手術となった.破裂孔は左室側壁LCx # 12近傍に存在した.縫合止血後,TachoComb, Dexon Meshで止血補助を行った.同年7月17日軽快退院となった.本症例の左室自由壁破裂にいたったさいに迅速にPCPSを装着し,手術が開始できたことに加え,前回手術時の強固な線維性癒着が致命的な心嚢腔への出血,心タンポナーデを防止し,本症例の救命に寄与したものと考えられた.