日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
高齢者(80歳以上)破裂性腹部大動脈瘤の治療成績と問題点
古林 圭一西本 昌義福本 仁志
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 34 巻 1 号 p. 1-4

詳細
抄録
1985年11月から2003年4月までの約17年間に当センターに搬入された破裂性腹部大動脈瘤126例を対象とした.このうち80歳以上の37例(男22,女15)を高齢者群(以下,O群),80歳未満の89例(男70,女19)を対照群(以下,Y群)とした.各群間での搬入時,術中,術後の各因子,治療成績について検討した.術前,術中因子として,発症-来院時間,ショック時間,来院時血圧,BE,Hb,BUN,creatinine,瘤径,手術時間,大動脈遮断時間,術中尿量,術中出血量を比較したが,有意差は認めなかった.心肺停止例は,O群14例(38%),Y群24例(27%)とO群で有意に高かった.生存率は,心肺停止例を含む全症例の比較ではO群37.8%(14例/37例)に対してY群61.8%(55例/89例)と有意に低率であった.一方,人工血管置換術完遂例の比較ではO群77.8%(14例/18例),Y群73.3%(55例/75例)で同等の生存率であった.両群間で,術前状態に差を認めないにもかかわらずO群では生存率が有意に低く,心肺停止例が有意に多かった.このことから,高齢者はいったんショック状態に陥るとそれに堪えることができないと推測された.一方,人工血管置換術完遂例では,両群間の術中因子,術後合併症率,生存率に有意差は認めないことから,ショック状態にいたるまでに手術をすることが,とくに高齢者では重要と考えられる.近年,待機手術の成績も向上しており,生理的機能年齢を重視した積極的な待機手術の施行が望まれる.
著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
次の記事
feedback
Top