日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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34 巻 , 1 号
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  • 古林 圭一, 西本 昌義, 福本 仁志
    2005 年 34 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1985年11月から2003年4月までの約17年間に当センターに搬入された破裂性腹部大動脈瘤126例を対象とした.このうち80歳以上の37例(男22,女15)を高齢者群(以下,O群),80歳未満の89例(男70,女19)を対照群(以下,Y群)とした.各群間での搬入時,術中,術後の各因子,治療成績について検討した.術前,術中因子として,発症-来院時間,ショック時間,来院時血圧,BE,Hb,BUN,creatinine,瘤径,手術時間,大動脈遮断時間,術中尿量,術中出血量を比較したが,有意差は認めなかった.心肺停止例は,O群14例(38%),Y群24例(27%)とO群で有意に高かった.生存率は,心肺停止例を含む全症例の比較ではO群37.8%(14例/37例)に対してY群61.8%(55例/89例)と有意に低率であった.一方,人工血管置換術完遂例の比較ではO群77.8%(14例/18例),Y群73.3%(55例/75例)で同等の生存率であった.両群間で,術前状態に差を認めないにもかかわらずO群では生存率が有意に低く,心肺停止例が有意に多かった.このことから,高齢者はいったんショック状態に陥るとそれに堪えることができないと推測された.一方,人工血管置換術完遂例では,両群間の術中因子,術後合併症率,生存率に有意差は認めないことから,ショック状態にいたるまでに手術をすることが,とくに高齢者では重要と考えられる.近年,待機手術の成績も向上しており,生理的機能年齢を重視した積極的な待機手術の施行が望まれる.
  • 垣 伸明, 今関 隆雄, 入江 嘉仁, 権 重好, 齋藤 政仁, 汐口 壮一, 岡田 修一, 長 磨美子, 田中 恒有
    2005 年 34 巻 1 号 p. 5-8
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1997年7月から弁膜症に対する低侵襲手術を導入し,2002年7月までに236例を経験した.そのうち連合弁膜症に対する2弁置換術(DVR)は21例あり,M群とした.また低侵襲手術導入以前の1990年1月から1997年6月に行った従来のfull sternotomyによるDVRは8例ありF群とし,両群間の比較検討を行った.手術時間,術中出血量は両群間において差を認めなかったが,大動脈遮断時間,体外循環時間は有意にM群で長かった(M群:189±6分,228±7分,F群:132±18分,183±16分).Maze同時手術は,M群で有意に多かった(M群:13例,F群;1例).術後挿管時間,ICU滞在時間には差を認めなかった.術後歩行開始はM群で有意に短かったが(M群;2.4±0.2日,F群:3.3±0.2日),術後在院日数には差を認めなかった.術後合併症は,両群において主要なものは認めず,術後の在院死亡は,両群に1例ずつ認めた.M群ではF群に対し,体外循環時間,大動脈遮断時間が長く,手術難易度は高いと思われた.術後経過および,手術成績は良好であり,DVRにおける低侵襲手術は許容できると思われた.また単弁の低侵襲手術に認められる早期退院の効果は得られなかったが,美容上や胸郭固定においては,患者の満足度は高いと思われた.
  • 山村 光弘, 宮本 裕治, 八百 英樹, 向井 資正, 田中 宏衞, 良本 政章, 吉岡 良晃, 鍛冶 正範
    2005 年 34 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1990年1月から2003年9月の開心術1,278例のうち,9ヵ月以上の慢性血液透析症例30例(2.3%)を対象とし,冠状動脈バイパス術(CABG)を施行した20例(CABG群)と弁置換術を施行した10例(弁置換術群)に分け,術後遠隔成績を中心に比較検討した.CABG群は男性14例・女性6例,平均年齢63±9歳で,弁置換術群は男性6例・女性4例,平均年齢56±12歳であった.CABG群の透析導入疾患は糖尿病性腎症が9例(45%),弁置換術群は慢性糸球体腎炎が7例(70%)と多く,また透析導入から開心術までの透析施行期間がCABG群では平均5年7ヵ月±55ヵ月であったのに対し,弁置換術群では10年1ヵ月±30ヵ月と有意に長かった(p=0.02).CABG群の術式は予定手術が13例(うちoff-pump CABGと左肺癌同時手術が各1例),緊急手術が7例(うちoff-pump CABG1例)であった.弁置換術群の術式は大動脈弁置換術(AVR)5例,感染症心内膜炎(IE)によるAVR2例,IEによる僧帽弁置換術(MVR)2例,MVR+三尖弁輪形成術1例で,全例に機械弁を用いた.両群とも追跡率は100%で,平均観察期間はCABG群が2年5ヵ月で,弁置換術群が2年11ヵ月であった.病院死亡はCABG群が3例(15%,術後7日目の脳梗塞,2ヵ月目の不整脈死,4ヵ月目の縦隔炎)で,弁置換術群が2例(20%,AVR術後17日目の壊疽性胆嚢炎,20日目の敗血症)であった.遠隔死亡はCABG群が5例(術後8ヵ月目の急性硬膜下血腫,1年目の肺炎,1年7ヵ月目の急性心筋梗塞,2年10ヵ月目の心不全,5年目の胃癌),弁置換術群が4例(術後4ヵ月半の子宮癌,1年4ヵ月と1年6ヵ月目の脳内出血,5年3ヵ月目の人工弁感染性心内膜炎であった.術後4年生存率はCABG群が56%(n=5),弁置換術群が47%(n=3)で,両群間には差がなかった(p=0.44).慢性血液透析症例における開心術の術後管理では,早期の感染コントロール,CABG後遠隔期に進行する冠状動脈病変に対する注意深い観察,弁置換術後遠隔期の脳内出血合併症予防に配慮した抗凝血薬療法が必要と思われた.
  • 梅末 正芳, 安藤 廣美, 福村 文雄, 長野 一郎, 朴 範子, 木村 聡, 田中 二郎, 岡松 秀一, 中村 権一, 吉田 るみ子
    2005 年 34 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    2000年1月より12月上旬において153例の心臓血管外科手術を行い15例(9.8%)にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による術後創感染が発症した.創感染の内訳は,縦隔洞炎5例,表層創感染9例および腹部大動脈瘤術後人工血管感染1例であった.創感染はすべて6月以降に集中して発症しており,同時期に手術を施行した83例中有効なデータが得られた76例を対象に術前術中因子を検討した.また感染患者より検出されたMRSAおよび医療従事者が保菌していたMRSAにつきパルスフィールド電気泳動法を用い遺伝子解析を行った.多変量解析によりMRSA感染の危険因子は,性別(男性),糖尿病の合併,緊急手術であった.縦隔洞炎発症5例のうち1例は術前の喀痰よりMRSAが検出されている症例であった.MRSAの遺伝子解析では創感染患者より少なくとも2種類のMRSA株を検出し,そのうちの1株は医師が鼻腔内に保菌していた株と同一株であった.感染予防対策として術前患者のMRSA保菌検査および保菌患者に対するムピロシンを用いた術前除菌,MRSA感染患者および保菌者の術前患者からの分離,MRSA保菌医療従事者の除菌,処置前後での医療従事者の手洗いの徹底,ほか米国疾病予防局の手術部位感染防止ガイドラインに準じた対策を講じた.上記感染予防対策導入後113例の心臓血管外科手術を行いMRSAによる術後創感染は1例(0.9%)のみであった.
  • 古澤 武彦, 西村 和典, 柳谷 信之
    2005 年 34 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Marfan症候群の上行大動脈起始部病変に対するBentall法,またはその変法の重篤な合併症の一つとして冠動脈吻合部の仮性動脈瘤が知られている.今回われわれはmodified Bentall法手術後に発生した左冠動脈吻合部の仮性動脈瘤に対し,肺動脈幹を切断した視野で,大伏在静脈(SVG)を用いた左冠動脈主幹部(LMT)の再建術を施行し,良好な結果が得られたので報告する.症例は40歳,女性.34歳でMarfan症候群,大動脈弁輪拡張症,大動脈弁閉鎖不全症,大動脈解離(DeBakey II型),右室梗塞に対し,modified Bentall法手術と#3への冠動脈バイパス術(CABG)を施行された.6年後に失神発作が認められ,精査の結果左冠動脈吻合部の仮性動脈瘤と診断され手術適応となった.肺動脈幹を切断することによってSVGを用いてのLMT再建術を良好な視野で施行することが可能であったので,有用な方法と考えられた.
  • 大楽 耕司, 古谷 彰, 斎藤 聰, 秋山 紀雄, 吉村 耕一, 竹中 博昭, 濱野 公一
    2005 年 34 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.平成14年9月に左膿胸の感染波及による胸部近位下行大動脈穿孔をきたしたため,自家静脈パッチによる穿孔部閉鎖および大胸筋皮弁充填術が施行された.しかし術後2ヵ月目に同部からの再出血を認め,ガーゼ充填による一時止血ののちにステントグラフト内挿術による止血を目的として当院紹介となった.同日に施行された緊急ステントグラフト内挿術により完全止血を得ることができ,術後グラフト感染の徴候もなく,経過良好にて第9病日に転院となった.転院後も大動脈穿孔部からの再出血はなく,グラフト感染も認めなかったが,術後2ヵ月目に炎症の再燃により内挿したステントグラフト中枢側断端の大動脈壁より大量出血をきたし失った.本症例においては,本法以外の救命手段はなく,術式選択として妥当と思われるが,感染を有する大動脈疾患に対するステントグラフト内挿術の適応および限界について文献的考察を加え報告する.
  • 古川 智邦, 高畑 修治, 林 載鳳
    2005 年 34 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞(AMI)に心室中隔穿孔(VSP)と右室自由壁破裂を合併した希な症例を2例経験した.症例1は70歳の女性で,左前下行枝(LAD)#6の完全閉塞に対する経皮的冠動脈内血栓溶解療法後にVSPと心破裂を発症し,心タンポナーデにて死亡した.死後の剖検にて右室自由壁破裂を認めた.症例2は76歳の女性で,LAD#8の完全閉塞に対する経皮的冠動脈インターベンション(ステント内挿術)後6日目にVSPを発症し,二重パッチ法にてVSP閉鎖術を施行した.術中所見にて右室前壁にOozing型の心破裂を認めたため,フィブリノゲン加第13因子製剤で同部の止血術を追加し,術後4週目に軽快退院した.LAD領域のAMIに合併した右室破裂は希であると同時に,われわれが検索しえたかぎりではすべての症例でVSPを伴っていることから,その関連性が示唆された.
  • 高橋 雅弥, 谷本 欣徳, 壷井 英敏, 江里 健輔
    2005 年 34 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    再手術時における到達法では正中切開がもっとも頻用されるが,種々の合併症があることも周知の事実である.とくに弁膜症の再手術に関しては,心拡大による癒着のため,心損傷などの合併症が起こりやすい.正中切開以外の到達法として,右前側方開胸がある.われわれの経験では右前側方開胸は術野が深く手術操作が困難であった.このため,right parasternal vertical incision (PVI)を採用した.症例は50歳,女性.主訴は労作時呼吸困難.患者は4度目の開心術であり,過去に僧帽弁置換術,三尖弁置換術を受けている.経過観察中に,三尖弁機能不全を認め,当科紹介となった.CTにて胸骨と右室の癒着が示唆された.手術はPVIにてアプローチした.この右開胸の利点は癒着剥離がほとんど不要なことである.前側方開胸に比較してPVIの利点は,1)術野が浅いこと,2)仰臥位で行えることの2点があげられる.PVIは再手術において有用な到達法であると考えられた.
  • 安藤 敬, 幕内 晴朗, 菊地 慶太, 村上 浩, 大野 真, 田所 衛, 干川 昌弘
    2005 年 34 巻 1 号 p. 37-39
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.定期健診で肝機能障害を認め,腹部CTを撮影したところ,偶然右房内腫瘍を認めた.肝実質には異常なく,心臓腫瘍に対して,人工心肺下に腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は,三尖弁からは離れ,心房中隔壁から発生した血液嚢腫であった.嚢腫内には白色血栓が認められた.術後経過良好にて第11病日目に軽快退院となった.腫瘍様病変である血液嚢腫はまれな腫瘍であり,幼児の剖検例に発見されることが多い.本症例は,成人発症,右房壁発生であり,きわめてまれな症例である.
  • 益原 大志, 吉原 克則, 渡邉 善則, 塩野 則次, 横室 浩樹, 小澤 司, 藤井 毅郎, 和田 真一, 小山 信彌, 高梨 吉則
    2005 年 34 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は,2ヵ月,女児.哺乳力低下および多呼吸を認め日齢10,当院搬送となる.心エコーでは,先天性大動脈弁狭窄症(congenital AS),心室中隔欠損症(VSD),心房中隔欠損症(ASD)を認めた.大動脈弁は二尖弁で大動脈弁形成不全を疑わせたが明らかな嚢腫像は認めなかった.日齢53にballoon aortic valvotomy (BAV)を施行し,大動脈造影にて大動脈縮窄症(CoA),動脈管開存症(PDA)を認めた.BAVは,ballooning良好であったが,BAV前後で圧較差に変化は認められなかった.Congenital AS,CoA complexの診断にて日齢70に手術施行となった.人工心肺を確立したのち,上行大動脈を横切開した.大動脈弁は,二尖弁であり前尖の中央に血液嚢腫を認め,切除した.術後心エコーで大動脈弁狭窄症の圧較差は22.5mmHgであった.VSDおよびCoAは良好に修復されていた.患者は,術後25日軽快退院現在外来にて経過観察中である.
  • 森田 英幹, 吉田 英生, 森本 徹, 神野 禎次, 多胡 護, 山根 正隆
    2005 年 34 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.冠動脈バイパス術の約1ヵ月後に胸水が出現した.胸部CTで心膜の肥厚を認め,心臓カテーテル検査で右房圧(RAP),右室圧(RVP),肺動脈楔入圧(PCWP)の上昇と,右室圧波形がdip and plateau型を呈していたため,収縮性心膜炎による右心不全と診断した.手術は,体外循環を用いて心拍動下に行い,左室側壁,後壁側まで広範囲に心膜を剥離,切除した.心膜の剥離にはハーモニックスカルペルが有用であったが,ヘパリンの使用に伴い心臓の剥離面から出血が認められ,その止血には難渋した.術後心不全の回復には時間を要したものの,術前に比べRAP,RVP,PCWPは低下し,右室圧波形のdip and plateau型も改善した.
  • 六鹿 雅登, 玉木 修治, 横山 幸房, 横手 淳, 中島 正彌
    2005 年 34 巻 1 号 p. 48-50
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    ソマトスタチンのアナログ製剤であるオクトレオチドが効奏した乳糜胸症例を経験した.症例は66歳,男性.遠位弓部大動脈瘤に対し,下行大動脈人工血管置換術を施行した.第3病日に乳糜胸を認め,中心静脈栄養,低脂肪食への変更を行ったが改善しなかった.第13病日よりオクトレオチドを投与し,第24病日目に乳糜胸は消失した.オクトレオチドは,術後の乳糜胸の治療に有効と思われた.
  • 吉鷹 秀範, 畑 隆登, 津島 義正, 大谷 悟
    2005 年 34 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.胸部X線写真異常影により精査目的で来院した.既往歴として20年以上の難治性高血圧あり.CT,心臓カテーテル検査などによりSellers III/IVの大動脈弁閉鎖不全症,最大径60mmの近位下行大動脈瘤およびその末梢での高度石灰化を伴う下行大動脈の狭窄(異型大動脈縮窄;圧差40mmHg)を認めた.また両側腎動脈の閉塞も認めた.手術は大動脈弁置換術を行い,open stent graftを用いて弓部全置換術を一期的に行った.また,異型大動脈縮窄に対して上行大動脈の人工血管より左外腸骨動脈に10mm人工血管で非解剖学的バイパス手術を行った.術後経過は良好で,上下肢の圧差が消失し,さらに血圧のコントロールが容易となった.
  • 荒木 善盛, 佐々木 通雄, 秋田 利明, 碓氷 章彦, 西本 和生, 小林 昌義, 古森 公浩, 上田 裕一
    2005 年 34 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤(AAA)壁に,DeBakey IIIb型急性大動脈解離が進展した稀少例を経験した.症例は83歳,男性.突然の胸背部痛を主訴に来院し,緊急の胸腹部造影CT検査を施行した.遠位弓部にentryを認めるIIIb型解離が,最大径8.2cmの腎動脈下腹部大動脈瘤に進展した所見を認めた.破裂の危険性は非常に高いと予測されたが,急性解離に対する保存的治療を優先させ,2ヵ月の厳重な安静降圧治療を行った.冠動脈造影検査で,左前下行枝を含む2枝病変を認めたため,OPCABとY-graftの同時手術を施行した.AAAに解離が進展した例は非常にまれで,破裂の危険があり早期の手術を考慮したが,幸い慢性期に移行させることができ,手術に有利であった.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 奥村 悟, 大川原 潤
    2005 年 34 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Stanford B型,DeBakey III b型急性大動脈解離に合併した上腸間膜動脈根部の動脈解離による腸管虚血に対し右外腸骨動脈-上腸間膜動脈バイパス術による上腸間膜動脈血行再建を行い救命しえた症例を経験したので報告する.症例は48歳,男性.Marfan症候群.10年前に大動脈基部置換術を受けた既往がある.突然の背部痛と腹痛で発症し造影CTでStanford B型急性大動脈解離に合併した上腸間膜動脈根部の動脈解離と診断された.大伏在静脈グラフトによる右外腸骨動脈-上腸間膜動脈バイパスを行い,さらに術後1年目に下行大動脈人工血管置換術を行った.グラフトは開存し,術後経過は良好である.
  • 澤田 康裕, 田中 啓三, 駒田 拓也, 片山 芳彦, 庄村 赤裸
    2005 年 34 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.1954年右肺上葉切除術,右胸郭形成術,2001年12月大動脈弁置換術を施行されワーファリン内服中であった.2002年6月嚥下困難を認め,胸部X線像,胸部CTなど施行した.胸骨偽関節と診断され,手術施行となった.胸部CT上胸骨上端のみが限局性に偽関節となっており,胸骨後面に無名動脈,上行大動脈の癒着を認めたため剥離は困難と考え,内固定はあきらめ,胸鎖関節より胸鎖関節面を含め鎖骨切除を施行した.術後は症状が軽快し退院したが1ヵ月後手術創血腫より出血を大量に認め救急外来受診し緊急手術を施行した.鎖骨下動脈分枝より出血を認めそれを止血し,鎖骨断端が不安定で鎖骨切除が不十分なため鎖骨切除端により右鎖骨下動脈分枝を損傷したと考えられ,鎖骨を追加切除した.以後問題なく症状も軽快した.本症例のように限局的に胸骨上端に偽関節を認める症例では鎖骨切除が有用な治療となりえたが,鎖骨切除のさい靭帯の温存,靭帯の再建,鎖骨切除の範囲を十分に考慮すべきであった.
  • 迫 史朗, 江石 清行, 野口 学, 有吉 毅子男, 高井 秀明, 尾立 朋大, 松隈 誠司
    2005 年 34 巻 1 号 p. 67-69
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    内胸動脈(ITA)使用による冠動脈バイパス術(CABG)の既往を有する患者における大動脈弁置換術(AVR)においては,適切な心筋保護のために,開存したITAグラフトの剥離,遮断が必要となる.そのさい癒着剥離に時間を要し,グラフト損傷にも注意を要する.われわれはITA使用によるCABGの既往を有するAVR患者2例に対して術式の簡素化のために術前ITA閉塞用balloonを留置し,大動脈遮断の間ITAグラフトをballoonで閉塞し,良好な心筋保護効果を得た.また癒着剥離を上行大動脈周囲に限局できるため,手術時間の短縮,出血量の減少につながった.ITAグラフトballoon閉塞法は,冠動脈バイパス術の既往を有する大動脈弁置換術の低侵襲化に有効な方法と考えられた.
  • 黄 義浩, 中村 譲, 儀武 路雄, 井上 天宏
    2005 年 34 巻 1 号 p. 70-73
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    修正大血管転位症(C-TGA)のおもな合併症である体側房室弁逆流(TR)は,房室ブロックと同様その予後に大きな影響を及ぼすが,小児期発症例における治療方針での異論は多い.今回,目立った合併心奇形のないC-TGA(S.L.L.)の2症例に対し,小児期に高度TRを認めたため人工弁置換術を施行した.臨床経過上の比較検討も併せて報告する.
  • 横山 幸房, 玉木 修治, 横手 淳, 六鹿 雅登, 鈴木 登士彦, 中島 正彌
    2005 年 34 巻 1 号 p. 74-77
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    開心術後における非定型抗酸菌症はまれな合併症の一つである.今回われわれは感染時期が近接し,Mycobacterium fortuitum(以下,M.fortuitum)が病原菌であった興味深い2症例を経験した.症例1は56歳,男性.僧帽弁閉鎖不全に対し僧帽弁形成術が施行された.第10病日から胸部正中創に蜂窩織炎が認められた.数日後に皮下膿瘍が形成された.第38病日にM.fortuitumが検出されたため,多剤併用療法が開始された.皮膚潰瘍,膿瘍は再発をくり返したが,15ヵ月後に創部感染は治癒した.症例2は26歳,男性.大動脈解離に対し大動脈人工血管置換術が施行された.術後経過は良好であったが第28病日より胸部正中創に発赤と膿瘍が認められた.第61病日にM.fortuitumが検出されたため,非定型抗酸菌症として治療が開始された.瘻孔拡大,深部に病巣が及んだため第67病日に有茎大網弁充填,植皮術が施行された.その後創部感染は治癒し,第137病日に退院となった.術後約1年,胸骨骨髄炎,縦隔洞炎の再燃は認められない.通常の抗生剤に抵抗性の創部感染,起炎菌不明の術後感染は非定型抗酸菌症の可能性を念頭において早期診断に努める必要があると思われた.
  • 大仲 玄明, 小宮 達彦, 田村 暢成, 高橋 信也, 尾畑 昇悟, 増山 慎二, 木村 知恵里
    2005 年 34 巻 1 号 p. 78-82
    発行日: 2005/01/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    交通外傷による大動脈の鈍的外傷は致命的であり,その救命率は低い.今回,自動車事故により外傷性胸部大動脈破裂をきたした症例に対してdelayed surgeryにて良好な結果を得られたので報告する.症例は54歳,女性.意識消失ならびに覚醒後に胸痛を訴え,また胸部X線上縦隔影の拡大を認めたため当院受診した.胸部CTにて遠位弓部大動脈損傷を認めたが,意識消失をきたしており,来院時,安定した血行動態であったため,まず集中治療室へ収容後,β blockerを中心とした厳重な血圧管理を開始した.その後,造影CTならびにMRIにて精査した結果,仮性大動脈瘤,肺挫傷を認めたが,これ以外の頭部,腹部の致死的合併症がないことが確認できた.受傷後2日目に低体温循環停止法,逆行性脳灌流を使用して体外循環下に遠位弓部大動脈人工血管置換術を行い,術後経過に問題なく術後2週間にて退院しえた.
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