2006 年 35 巻 1 号 p. 49-52
症例は56歳,男性.不明熱に対して他院で抗生剤投与を受けていたが,鬱血性心不全に伴う呼吸困難が出現したため,当院紹介入院となる.血液培養ではStreptococcus gordoniiが検出され,心エコー検査では感染性心内膜炎(IE)による大動脈弁閉鎖不全症と診断された.内科的治療では心不全のコントロールが不可能であったために緊急手術を施行した.大動脈弁は二尖弁で弁尖には高度の石灰化と疣贅を認めたが,弁輪部には感染所見は認めなかった.疣贅から離れた左房上壁の心筋内に膿瘍を形成していた.手術は,上左房切開を加えて心筋内膿瘍を可及的に切開・排膿したのちに大動脈弁置換術を施行した.本症例では弁輪部とは離れた部位に膿瘍が認められたことから,血行性に感染が波及したものと考えられた.