2006 年 35 巻 3 号 p. 127-131
心臓大血管術後の創感染に対し,vacuum-assisted closure (VAC)療法を採用した.2004年3~12月に発生した術後胸部正中創感染の9例を対象とした.8例が男性,1例が女性で,平均年齢は69.6歳,7例が心拍動下冠動脈バイパス術後,2例が弁置換術後であった.糖尿病を6例,慢性腎不全を5例(うち透析患者4例),慢性閉塞性肺障害を2例に合併していた.6例が表層感染,3例が深部感染(胸骨離開)であった.創感染の兆候がみられただちに開放創とし,洗浄とデブリードマン後,VAC療法を開始した.表層感染の症例では速やかに創培養が陰性となり,早期のwound closureにより閉創が促進された.深部感染の症例では,発熱や炎症反応は比較的早期に治まったが,創培養陰性までには2ヵ月程度要した.1例はVACのみで閉創治癒したが,2例は腹直筋皮弁あるいは大胸筋皮弁を用いて閉創した.VAC療法は創治療の閉鎖法と開放法の利点を兼ね備えており,持続吸引により,浸出液,膿が吸引され,肉芽形成が促進されるので,速やかに炎症反応が低下し,表層の感染が縦隔洞炎に進展することが予防された.また,週2~3回の交換でよいので患者や医療スタッフの負担を軽減することができた.