2006 年 35 巻 5 号 p. 289-291
腹部大動脈高位閉塞による,両下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)で右腋窩-両大腿動脈バイパス術施行後,外来経過観察中の症例が労作時胸痛を自覚し,当院に救急来院された.冠動脈造影および左室造影検査を施行し,左主幹部病変および高度虚血性僧帽弁逆流を認めたため,手術目的で当科紹介となった.手術は,冠動脈バイパス術および僧帽弁輪形成術(Physio ring 26mm)を施行した.術前からの低左心機能のため,体外循環離脱困難を認めた.そこで,上行大動脈からの大動脈内バルーンパンピング(IABP)挿入により,体外循環から離脱し,皮膚のみの閉創で手術終了とした.術後2日目にIABP抜去および閉胸を行い同日抜管した.以降,経過良好で,術後冠動脈造影検査によりグラフト開存を確認し,術後16日目に軽快退院した.