日本心臓血管外科学会雑誌
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腋窩動脈送血による術中大動脈解離の1例
畠山 正治福田 幾夫谷口 哲大徳 和之皆川 正仁鈴木 保之福井 康三
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2007 年 36 巻 3 号 p. 127-131

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抄録

開心術時の合併症として大動脈解離は希であるが,致命的な合併症の一つである.症例は69歳,男性.大動脈弁閉鎖不全症,最大径60mmの上行大動脈瘤に対してreimplantation法による大動脈基部形成術を予定した.右腋窩動脈に送血管を直接挿入し送血を開始したが,送血開始10分後に突然,送血回路内圧が上昇した.経食道エコーおよび大動脈エコーで,それまでみられなかった上行から下行大動脈におよぶ大動脈解離を認めた.超低体温循環停止とし,Bentall手術と近位弓部大動脈人工血管置換術を行い救命しえた.上行および弓部大動脈内にentryはみられず,右腋窩動脈からの血流による腕頭動脈解離が原因と思われた.術後CTでは,下行大動脈に解離が残存しており,横隔膜下の偽腔は血栓化しておらず,上腸間膜動脈は偽腔から灌流されていた.細い腋窩動脈からの送血では,送血管から噴出する血流のずり速度は大きく,解離の発生に注意が必要である.

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