2007 年 36 巻 4 号 p. 202-205
症例は53歳,男性.平成10年ころより左足趾痛を認めた.半年後,同部位に潰瘍が生じたために他院で左第5趾をデブリードメントし抗血小板薬などによる保存的治療を行ったが,改善しないため当院を紹介された.腹部CTで腎動脈下腹部大動脈に限局性で全周性の石灰化病変を認め,動脈造影検査でも同部位に一致して石灰化を伴う狭窄病変を認めた.病変より末梢の血管に閉塞性病変を認めなかったことからcoral reef aortaを塞栓源とするblue toe syndromeと診断した.手術は後腹膜経路により塞栓源である病変を切除したのち,人工血管置換術と腰部交感神経節切除術を行った.術後経過は良好で第37病日に退院した.薬物療法は継続し,術後47日目で潰瘍は治癒した.Coral reef aortaの治療戦略としては石灰化の局在位置,下肢虚血症状やblue toe syndromeなどの有無を考慮し決定すべきであると考えられた.塞栓症を合併しかつ高度の石灰化を伴う本症例に経皮的血管形成術(PTA)は禁忌と考えられる.Coral reef aortaと足趾潰瘍合併症例に対して,塞栓源切除術,血行再建と腰部交感神経節切除術を行い良好な結果を得た.