日本栄養士会雑誌
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被災者の震災前後における非常持ち出し品準備状況の変化および食事摂取困難者に必要とされる災害時備蓄食品に関する検討
那須 恵子藤原 愛子有泉 祐吾中村 和美
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2012 年 55 巻 12 号 p. 960-970

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抄録

本研究は、震災前後における被災者の非常持ち出し品準備状況の変化ならびにむせや飲み込み困難がある人への備蓄食品を考える上で考慮すべき事柄を明らかにすることを目的とした。 福岡県西方沖地震に被災した福岡市玄界島地区の全214 世帯および宮城県北部地震に被災した東松島市矢本地区のおよそ5 , 300 世帯の世帯代表者を対象に、平成19 年9~12 月に無記名自記式質問紙調査を実施した。回答があった総数289 人のうち、性および被災時年齢に回答が得られた262 人(玄界島地区48 人および矢本地区214人:有効回収率はそれぞれ22 . 4% および4 . 0%)について解析した。解析にあたり、調査時点における食事摂取状況を基に、むせやすい者をグル-プⅠに、汁物がないと飲み込みにくい者をグル-プⅡに、およびこれらの問題がない者をグル-プⅢに分類した食事摂取の困難性の指標を作成した。 非常持ち出し品準備状況について、両地区とも被災前と比べ準備している者の割合が増加した。しかし、調査時点でも準備していない者の割合は20~30% 見られ、被災経験が非常持ち出し品の準備状況へ必ずしも影響したとは言えなかった。食事摂取の困難性指標から見た備蓄食品の選択では、グル-プⅢに比べ、グル-プⅠでは即席麺、五目飯、カレ-等はあまり選択されず、グループⅡでは五目飯、乾パン等があまり選択されなかった。これらのことから、むせや飲み込み困難がある場合は、備蓄食品を選択する幅が狭まる可能性が示唆された。

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