抄録
歯科鋳造用Ni-Cr合金の破壊過程をdislocationの立場から金属組織学的に検討した.その結果, voidの周辺には{111}面上のslip traceの集まりがセル組織内にみとめられた.他方, voidの先端にはdislocationのない領域がみいだされた.そのvoidの形態は, 引張軸に対して引きはなされたようなものやセル組織内部では波状なものであった.従って, void形成のメカニズムとしては, 2つのセル状界面上への場合, すなわち, dislocationの集積およびinclusion周辺における応力場の発生に基づく応力集中が考えられた.さらに, voidの連結および伝播は急激なものであり, それらは引張軸方向に対して大体45度をなすセル状界面に沿って発生することが判明した.