歯科材料・器械
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1 巻, 2 号
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原著
  • 若狹 邦男, 山木 昌雄
    1982 年1 巻2 号 p. 107-111
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
     歯科鋳造用Ni-Cr合金の破壊過程をdislocationの立場から金属組織学的に検討した.その結果, voidの周辺には{111}面上のslip traceの集まりがセル組織内にみとめられた.他方, voidの先端にはdislocationのない領域がみいだされた.そのvoidの形態は, 引張軸に対して引きはなされたようなものやセル組織内部では波状なものであった.従って, void形成のメカニズムとしては, 2つのセル状界面上への場合, すなわち, dislocationの集積およびinclusion周辺における応力場の発生に基づく応力集中が考えられた.さらに, voidの連結および伝播は急激なものであり, それらは引張軸方向に対して大体45度をなすセル状界面に沿って発生することが判明した.
  • 若狭 邦男, 山木 昌雄
    1982 年1 巻2 号 p. 112-117
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
     歯科鋳造用Ni基合金(低溶融32Ni-23Cu-25Mnと高融点84Ni-9Cr合金)の組織変化をスプルー線の植立方向, 即ちフルクラウン型鋳造体(ADA規格)咬合面中央垂直位にスプルー線を植立したもの(以下, 0度植立とする)とその咬合面縁端部に45度の傾斜角で植立した場合(以下, 45度植立)について検討した.はじめに, 鋳造体内部組織をみると, 低溶融32Ni-23Cu-25Mn合金の場合, 0度および45度植立時に3種類の結晶粒がみとめられたが, 高融点84Ni-9Cr合金鋳造体では, 0度植立の場合セル組織のみが見いだされるのに対して, 45度植立時にセルラー・デンドライト組織を構成していた.第二には, 鋳造体表層部の組織形態やその大きさ分布も二合金においてスプルー線の植立方向のちがいによって著しく影響をうけることがわかった.第三として, 腐食性については, 低溶融合金では, 特に0度植立時にB粒の腐食性が著明となることおよび高融点合金では植立方向に関係なく内部組織でのNi偏析の著明なことが判明した.
  • 今 政幸, 浅岡 憲三, 桑山 則彦
    1982 年1 巻2 号 p. 118-123
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
     本研究では低融ガラス粉末にアルミナ, 石英および石英ガラス粉末を配合した焼成温度範囲の広い複合焼結体の強さと透光性について調べた.アルミナを加えた複合焼結体の曲げ強さはガラス成分や膨張係数の相違にかかわらずアルミナの含有量が増加するにつれて大きくなった.しかもアルミナを50wt%含む複合焼結体はガラス単独の焼結体の2〜3倍以上の170〜180 MPaの曲げ強さを示したが, 透光性はアルミナを20%加えただけでも急激に低下した.石英を添加した場合は強さの向上がわずかであり, 石英ガラスではかえって強さが低下する傾向がみられた.中でも膨張係数の大きい低融ガラスとの複合焼結体が極端な強さの低下を示したが, 膨張係数が比較的大きくてもクリストバライトを析出しない場合はかなり石英ガラスを加えても強さがほとんど低下しないことがわかった.またクリストバライトを析出しない低融ガラスと石英ガラスの複合焼結体はとくに高い透光性を示した.
  • 木村 博, 寺岡 文雄, 斉藤 隆裕
    1982 年1 巻2 号 p. 124-130
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
     口腔内の悪性腫瘍等に放射線照射を行い, 治療の効果が得られているが, 放射線照射による歯周疾患等を併発することがある.著者らは放射線治療のための放射線照射と, 歯質の崩壊との関係を明らかにするための基礎的研究を行っている.すなわち人歯と牛歯の象牙質に60Coγ線と中性子線を照射し, 放射線による象牙質の劣化について検討している.人歯と牛歯の前歯を用い歯軸方向が長軸となる様に切削し, 約0.8×4.5×6.5 mmの試料を得た.湿潤状態で試料に60Coγ線は1×105から1×107rまで, JRR-4による中性子線は8×1013n/cm2・secの熱中性子束を1から40分間照射した.放射線による影響を引張試験, X線回析法, X線マイクロアナリシス, TG-DSC, IR, とSEMで観察し検討した.放射線照射の歯牙に与える影響は, 初期では架橋効果を期待できるが, 60Coγ線の1×106rでは劣化し, 1×107r照射および中性子線の8×1013n/cm2・sec×10 minで象牙質は崩壊した.象牙質の強度はコラーゲンがかなり寄与していると考えられる.
  • 小島 克則, 門磨 義則, 増原 英一
    1982 年1 巻2 号 p. 131-137
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸フッ化物 (MF) とメタクリル酸メチル (MMA) から MF-MMA 共重合体を合成し, その共重合体および共重合体とポリメタクリル酸メチル (PMMA) のブレンドポリマーのフイルムからのフッ素イオンの溶出率をフッ素電極を用いて測定した.その結果, フッ素イオンが時間の経過にともなって一定の割合で溶出することがわかった.
    フイルムからのフッ素イオンの溶出するメカニズムは MF-MMA 共重体の隣り合う MF 単位が加水分解してフッ素イオンを放出し, 酸無水物を形成する.それがさらに加水分解してカルボン酸を形成することを赤外線吸収スペクトルによって確認した.
    10%クエン酸水溶液に各種金属塩化物を 3%溶解した前処理液でウシの抜去歯の象牙質を処理してから 5%-4-META/MMA-TBB-O 系接着剤で接着させ, 接着強さに対する前処理液の効果を調べたところ, 10%クエン酸水溶液に3%塩化第2鉄および3%塩化第2銅を加えた前処理液で処理した場合に顕著な効果があった.
    65%リン酸水溶液で処理したヒトのエナメル質と10%クエン酸液に3%塩化第2銅を加えた水溶液で処理したヒトの象牙質にフッ素徐放性ポリマー用いた4-META/MMA-TBB-Oレジンで接着させたところ, エナメル質では平均 12.2 MPa(84.7 kg/cm2), 象牙質では平均 12.2 MPa(124 kg/cm2)程度の接着強さを示した.
  • 岡本 佳三
    1982 年1 巻2 号 p. 138-171
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    焼付用陶材と卑金属合金との結合機構に関する要因を調べるために, 陶材の諸性質を物理化学的に探索した.その結果, 蛍光X線分析による各陶材の組成は, SiO_2, Al_2O_3が大部分を占め, 結合機構に関与していると思われるSnO_2はOPAQUE陶材に多く含まれており, 最高含有量は23.75%であった.また, Metal Conditionerの組成は陶材に類似していた.陶材の粒度を大別すると4種類の粒子径に分類され, 熱膨張での転移点は500〜600℃で0.6〜0.76%の膨張率を示し, 軟化点は610〜830℃で0.73〜1.36%であった.陶材に卑金属元素の構成成分を添加すると転移点とその時点での熱膨張率には余り変化が見られなかったが, 軟化点は高温側に移動し, 熱膨張量は大きくなり, 耐熱性が増した.焼付き強さは合金の化学的な表面処理よりも, 物理的な表面処理を行なう方が効果が表われる.また, 両界面付近における元素の挙動状態には, X線マイクロアナライザーによる面分析(特性X線像)とX線強度マップとの併用が有効な手段であった.
  • 青木 秀希, 渥美 公則, 赤尾 勝, 三浦 直樹, 秦 まゆみ
    1982 年1 巻2 号 p. 172-179
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    ハイドロキシアパタイト, アクリル酸共重合物, 酸化亜鉛の3成分による新しい水硬性セメントを試作した. 標準稠度, 硬化時間を調べると, アパタイトの含有量が多いか, 粉液比 W/P が大きくなると硬化時間は長くなり, (3分〜12分), 標準稠度試験によるセメントの広がりも大きくなることがわかった. 圧縮, 曲げ, 引っ張り強度を調べると, 圧縮強度は700 kg/cm2以上, 曲げ強度は250 kg/cm2前後で, 引っ張り強度 (diametral tensile strength) は80 kg/cm2前後となり, 歯科用セメントとして使用に耐えうることがわかった. これらのアパタイトセメント硬化体を, 37℃の耳下腺唾液, 生理的食塩水, 蒸留水中に放置すると, 形状変化はみられず, 圧縮強度はいずれも増大することがわかった. 試作したアパタイトセメント硬化体は多孔質体であった.
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