抄録
5〜40%の範囲の塩化カルシウム溶液で処理を行ったアルジネート印象に注入した超硬質せっこうの表面における凝結反応状態をSEM観察およびX線回折分析によって調べた.無処理のアルジネート印象面および従来から用いられている2%硫酸亜鉛溶液で処理した印象面に注入したせっこうの表面には, 半水塩がかなり残存していたが, 塩化カルシウム溶液で処理した場合には, せっこう表面での二水塩の成長が著しく促進された.固定処理を行ったアルジネート印象面に注入したせっこうの表面における二水塩の結晶成長の様式は, 付加型シリコーンゴム印象面での様式とは異なっていた.処理液の濃度, 処理時間およびアルジネート印象材の種類によっても, その結晶成長の様式は異なっていた.以上のことから, 塩化カルシウム溶液は, アルジネート印象に注入した超硬質せっこう模型の表面性状を, 改善するための非常に有効な固定液であると結論づけられる.