歯科材料・器械
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原著
リン酸アルミニウム結合材の研究 : 第1報 アルミナ水和物との反応
亀水 秀男行徳 智義飯島 まゆみ若松 宣一足立 正徳後藤 隆泰土井 豊森脇 豊久保 文信生内 良男
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1991 年 10 巻 5 号 p. 644-652

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抄録

第一リン酸アルミニウムとアルミナ水和物との反応系を利用することで新しい歯科鋳造用結合材の開発を試みた.この実験では, 結合材として市販の粉末タイプと溶液タイプの第一リン酸アルミニウムを使用し, 硬化反応材としてアルミナ水和物を使用した.アルミナ水和物は10%硫酸アルミニウム塩の溶液をpH7および10で調整して合成した.アルミナ水和物は, X線回折法により, pH7では非晶質, pH10では結晶質のものであった.第一リン酸アルミニウムが粉末の場合, これに30〜70%の範囲でアルミナ水和物を混合し, 水で練和した.溶液の場合, 直接アルミナ水和物と練和して, 結合材とした.この研究では, 反応時の硬化時間をアルミナ水和物の反応性の指標として考え, 各アルミナ水和物を含んだ結合材について検討した.また, 硬化体の反応生成物はX線回折法とSEMによって検討した.粉末第一リン酸アルミニウム結合材では, 硬化時間は結晶質, 非晶質ともアルミナ水和物が増加すれば短くなった.さらに, 非晶質アルミナ水和物は結晶質のものより硬化が速かった.モル比Al2O3/P2O5=1のとき, すなわち40wt% Al2O3・nH2Oを混合したとき最も高い圧縮強度を示した.反応生成物は結晶質のアルミナ水和物を含む硬化体以外ほとんど非晶質であった.溶液第一リン酸アルミニウム結合材では, 硬化時間は粉末第一リン酸アルミニウムと同程度の値であった.圧縮強度はAl2O3/P2O5のモル比が高くなるにつれて増加した.また, 反応生成物は全ての場合で非晶質であった.非晶質のアルミナ水和物を含んだ硬化体のSEM像では結晶質アルミナ水和物を含む硬化体で観察された密な組織構造にかわって疎な組織構造もみられた.非晶質アルミナ水和物を含む第一リン酸アルミニウム結合材では歯科用埋没材に利用するのに適切な硬化時間(12分間〜6時間)と十分な圧縮強度(90〜130kgf/cm2)を示すことがわかった.

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© 1991 一般社団法人 日本歯科理工学会
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