歯科材料・器械
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10 巻, 5 号
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原著
  • 堤 信之, 大島 浩
    1991 年10 巻5 号 p. 555-565
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    歯科材料の口腔機能シミュレーション下での細胞毒性試験をめざす場合, 材料を抽出して行う方法がある.しかし, 実際に試験を遂行する上で抽出方法, 抽出液, 抽出回数, 細胞種及び判定法などに関して未だ不明な点が多い.本実験ではこれら抽出条件が歯科材料の細胞毒性試験に及ぼす影響を明らかにすべく, 歯冠補綴用材料を用いて検討を行った.その結果, 37℃で200rpmの旋回を負荷する動的抽出では, 37℃での静置抽出や121℃, 2気圧の高圧蒸気滅菌器中での高温抽出に比較すると, 実験に供した材料, とくにNi-Cr合金に対して細胞毒性が明確に認められた.抽出液の種類に関しては, 血清添加培養液では他の抽出液に比較して材料, とくにNi-Cr合金の細胞毒性が顕著に認められた.抽出回数による細胞毒性への影響については, 実験材料中で常温重合レジンにおいて回数を重ねるとともに減少した.L-929細胞では歯肉由来初期継代培養細胞に比べ材料に対する細胞毒性が明確に認められた.中性赤とMTTを使用した2種の判定法はともに各種材料について同じ傾向の細胞毒性データを示し, 両法間での相違は認められなかった.以上の結果から, 今回の歯冠補綴用材料の細胞毒性試験には血清添加培養液を用い, 動的抽出で24時間を1単位として5回の抽出を行えば, 評価できることがわかった.
  • 渋谷 功, 早川 徹
    1991 年10 巻5 号 p. 566-575
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    試作デンチンプライマーのコンポジットレジンと象牙質との接着に及ぼす影響について調べた.N-ビニルピロリドン(NVP), メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(M4G, M9G, またはM23G), 及びポリ-N-ビニルピロリドン(PNVP1, PNVP2, またはPNVP3)からなるデンチンプライマーを調整した.HEMAもデンチンプライマーの成分として使用した.新鮮牛歯の象牙質面を中性に調整した0.5MのEDTA, または40%のリン酸で前処理した後, それぞれのデンチンプライマーを60秒間作用させた.その後, クリアフィルニューボンド, クリアフィルF IIを適応し, 37℃水中に1日浸漬後のコンポジットレジンと象牙質との引張り接着強さを測定した.EDTA前処理の場合は, NVP, 50%M9G, 及び50%M23G水溶液が接着性向上に効果があった.リン酸前処理の場合には, 50%M23G, 35%HEME, 及びポリ-N-ビニルピロリドン水溶液が効果があった.さらに, 新たに開発したデンチンプライマー, MTYA・M9G(2%MTYA-50%M9G水溶液), MTYA・G・M9G(A:2%MTYA-50%M9G水溶液, B:2%グルタルアルデヒド水溶液), 及びMTYA・G・PNVP(A:1%MTYA-35%PNVP1水溶液, B:2%グルタルアルデヒド水溶液)はEDTAで前処理した象牙質に対して有効であった.特に, MTYA・G・PNVPは11MPaと最も高い接着強さを与えた.
  • 有川 裕之, 高田 和之, 櫨元 健壱, 吉原 正剛, 奥 淳一, 蟹江 隆人, 藤井 孝一, 井上 勝一郎
    1991 年10 巻5 号 p. 576-580
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    義歯床用材料の粘弾性的性質を検討するため, アクリルレジン(加熱重合型, 流し込み型), ポリカーボネートレジン, ポリサルフォンレジン, ポリエーテルサルフォンレジンの5種類の義歯床用材料について, ねじれ自由減衰型粘弾性測定装置を用いて室温から200℃にわたって動的ずり弾性率を測定した.その結果, スルフォン系樹脂(ポリサルフォンレジン, ポリエーテルサルフォンレジン)の37℃におけるずり弾性率は約1×1010dyne/cm2で, アクリルレジンよりも小さい値を示した.しかし温度の上昇によるずり弾性率の低下は非常に小さく, 室温から200℃までほぼ一定していた.またスルフォン系樹脂の損失率は80℃と160℃付近にわずかなピークがみられるものの, その値は全温度域にわたって他の材料よりも小さく, 熱的変化にたいして最も安定した材料と思われる.一方, 水中に浸漬した試料の場合, すべての材料で空気中試料に比べて弾性率は低下したが, スルフォン系樹脂は他の材料に比べてその低下は小さく, 吸水による影響は少なかった.
  • 下里 隆史, 山中 彬, 山崎 升
    1991 年10 巻5 号 p. 581-600
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    義歯床用PMMAレジンの補強に炭素およびアラミド繊維クロス複合によるマクロ補強およびアラミド繊維の構成分子を複合したミクロ補強(分子複合レジン)を行い, その歯科理工学的性質とコアーマトリックスの相互作用をDMTAなどを用い検討した.その結果, 繊維複合系ではラテックス系(CLR)処理によるアラミド繊維の方が優れ, また分子複合レジン系では直線性の高い分子(PPTA)をコア材に用いることが奨められる.
  • 今里 聡, 横田 若生, [タル]味 寿, 鳥居 光男, 土谷 裕彦
    1991 年10 巻5 号 p. 601-605
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    ボンディング層を含むコンポジットレジン充〓物からのベースモノマーの溶出特性を解明する目的で, コンポジットレジン単体, ボンディング材単体ならびにそれらの併用物からのTEGDMAの溶出を調べた.加えて, Photobondのボンディング材層を透過するTEGDMAの濃度を測定した.併用試料からのTEGDMA溶出濃度は, ボンディング材単体試料からのものよりも高かった.とくに, Photobondによるボンディング材単体試料からはTEGDMAの溶出を認めなかったが, Photoclearfil BrightとPhotobondによる併用試料からはわずかにTEGDMAの溶出が認められた.TEGDMAはPhotobondによるボンディング材単体試料を透過したが, ボンディング層の厚さとTEGDMAの透過性には関係がなかった.本実験において用いた方法は, ボンディング層を含めたコンポジットレジン充〓物からのモノマー溶出を検討する際に有用であると思われた.
  • 森山 京介, 中村 健吾, 後藤 真一
    1991 年10 巻5 号 p. 606-623
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    接着ブリッジに使用可能な強度と伸びを有し, かつ耐変色性の良い金パラジウム銀合金を開発することを目的として, 35Pd-20Cu-45Ag合金, およびこれに金を10〜30wt%加えた合金を溶製し, 鋳造・線引加工した合金の諸性質を調べた.Ag-Pd-Cu母合金に金を添加すると, 硬化熱処理時の引張強さは低下するが, 伸びが向上して靱性を増すこと, 耐変色性が向上すること, 高パラジウム, 高銅領域では, 20Au-28Pd-16Cu-36Ag合金の諸性質が最良で, 実用に耐えるものであることを示した.さらに, 鋳造欠陥の少ない線引加工試料と鋳造試料の機械的性質とを比較した.
  • 猪鹿倉 兼治, 門磨 義則, 今井 庸二
    1991 年10 巻5 号 p. 624-628
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    象牙質用のプライマーとしてN-メタクリロイルオキシエチル-2-ピロリドン(MEP)の水溶液を, 市販及び自家調合した光重合型ボンディング剤と組み合わせて用い, 象牙質とコンポジットレジンの接着強さを検討した.その結果, MEPプライマーは接着強さを有意に向上させた.市販のクリアフィルフォトボンドとの組合せで9.4MPa, 自家調合したトリエチレングリコールジメタクリレート(3G)/dl-カンファーキノン(CQ)/1, 3, 5-トリメチルバルビツール酸(TMB)系のボンディング剤との組合せで8.2MPaの接着強さが得られた.
  • 太田 匠, 門磨 義則, 今井 庸二
    1991 年10 巻5 号 p. 629-634
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    バルビツル酸誘導体/塩化第二銅からなる重合開示剤によるMMA系レジンの象牙質への接着を検討した.1, 3, 5-トリメチル-2-チオバルビツル酸/塩化第二銅の組合せでは10%クエン酸-3%塩化第二銅水溶液で処理した象牙質に対して, 接着促進モノマーを使用せずに, 13.9MPaという大きな接着強さが得られた.この系での接着メカニズムを理解するためのモデル実験として, 各種処理液で処理した脱灰象牙質シート存在下でMMAの重合を行い, 硬化時間, 生成するPMMAの分子量, シートへのPMMAのグラフト率を測定した.その結果, 象牙質に吸着された銅イオンがMMAの重合に関与し, 接着性にも影響を及ぼしている可能性が示唆された.
  • 田口 博康
    1991 年10 巻5 号 p. 635-643
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    金, 銀, 銅をベース合金としてこれにパラジウム, 白金, インジウム, 亜鉛等を添加して耐食性や機械的性質の改善を行ってきた.しかし, 貴金属を使用するため合金の価格が高価になり, また, 鋳造体の鋳肌は黒色あるいは黒灰色の酸化膜で覆われる.そこで, 本研究は黒色系酸化膜のない黄金色を維持するために, 銅単体の替わりにボロンを含んだ銅を添加して試作合金を作り, 機械的性質と金の色調にどのように影響するか検討したところ, 次のような結論を得た.1)Au-Ag-Cu系合金にボロンを含有した銅の添加は引張り強さ, 伸び, 硬さなどの機械的性質が幾分改善される.2)Au-Ag-Cu系合金にボロンを含有した銅の添加は鋳肌時の色調に酸化膜の少ない黄金色を呈する.3)研磨時の色調はボロンを含有した合金の色調と18カラット金合金と近似している.4)ボロンを含んだ銅を添加するとボロンは脱酸剤と酸化被膜防止等の作用をするので合金の変色防止に大いに寄与する.
  • 亀水 秀男, 行徳 智義, 飯島 まゆみ, 若松 宣一, 足立 正徳, 後藤 隆泰, 土井 豊, 森脇 豊, 久保 文信, 生内 良男
    1991 年10 巻5 号 p. 644-652
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    第一リン酸アルミニウムとアルミナ水和物との反応系を利用することで新しい歯科鋳造用結合材の開発を試みた.この実験では, 結合材として市販の粉末タイプと溶液タイプの第一リン酸アルミニウムを使用し, 硬化反応材としてアルミナ水和物を使用した.アルミナ水和物は10%硫酸アルミニウム塩の溶液をpH7および10で調整して合成した.アルミナ水和物は, X線回折法により, pH7では非晶質, pH10では結晶質のものであった.第一リン酸アルミニウムが粉末の場合, これに30〜70%の範囲でアルミナ水和物を混合し, 水で練和した.溶液の場合, 直接アルミナ水和物と練和して, 結合材とした.この研究では, 反応時の硬化時間をアルミナ水和物の反応性の指標として考え, 各アルミナ水和物を含んだ結合材について検討した.また, 硬化体の反応生成物はX線回折法とSEMによって検討した.粉末第一リン酸アルミニウム結合材では, 硬化時間は結晶質, 非晶質ともアルミナ水和物が増加すれば短くなった.さらに, 非晶質アルミナ水和物は結晶質のものより硬化が速かった.モル比Al2O3/P2O5=1のとき, すなわち40wt% Al2O3・nH2Oを混合したとき最も高い圧縮強度を示した.反応生成物は結晶質のアルミナ水和物を含む硬化体以外ほとんど非晶質であった.溶液第一リン酸アルミニウム結合材では, 硬化時間は粉末第一リン酸アルミニウムと同程度の値であった.圧縮強度はAl2O3/P2O5のモル比が高くなるにつれて増加した.また, 反応生成物は全ての場合で非晶質であった.非晶質のアルミナ水和物を含んだ硬化体のSEM像では結晶質アルミナ水和物を含む硬化体で観察された密な組織構造にかわって疎な組織構造もみられた.非晶質アルミナ水和物を含む第一リン酸アルミニウム結合材では歯科用埋没材に利用するのに適切な硬化時間(12分間〜6時間)と十分な圧縮強度(90〜130kgf/cm2)を示すことがわかった.
  • 川中 正雄
    1991 年10 巻5 号 p. 653-659
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    X, Y, Z軸制御の3軸加工機を用いて歯科用クラウンを切削加工法で作製する場合, 必ず加工試料の反転を行わねばならない.咬合面を含むクラウン上面の加工の後, 試料を反転し, クラウン外面アンダーカット部およびクラウン内面加工を行うが, その内, 内面加工は支台歯模型計測データのZ座標値を正負変換し凹型加工するいわば"ならい転写加工"である.この場合, Z座標値の変換によって座標軸系が変化するため, 目的とするクラウン内面形態の鏡面体(=ミラーイメージ)を加工する恐れがある.そこで, Z座標値以外にさらにもう1軸の座標値を正負変換し, ミラーイメージ加工を防いだ.内面加工時の工具オフセットは外面加工時とは逆方向, すなわちクラウン内面を表現する曲面で囲まれる領域にオフセットを求めなければならない.オフセット面の算出にはスプライン補間を利用し, 各計測データ点に対応するオフセット点をまず算出した上で, 各オフセット点間をスプライン補間して工具オフセット面を求めた.
  • 川中 正雄
    1991 年10 巻5 号 p. 660-664
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    試料の上下反転に際し, クラウン上面とアンダーカット部との加工には, CADデータベースの点分布構造を利用して冠外面形態データ(=今回はCADデータベースを使用)を最大豊隆部で上下2分割して使用した.初期加工時および試料反転時の位置決定は切削加工試料である直方体ワックスブロックの角部に工具先端を設定して行った.上面加工時の初期原点はワックスブロックの底面に, 反転時の原点は同一平面である反転後の試料上面に設定することによって, 反転に伴う高さ方向(Z方向)のデータ結合を可能にした.ただし, 反転後に使用するアンダーカット部データはCADデータベースの分割後, Z座標値を正負変換して使用しなければならない.X, ZY方向の位置合わせはワックスブロックの有する対面の並行性, 隣接面の垂直性を利用し, ワックスブロック左側前上方の角部に工具先端を近接させた状態で加工機の零点設定をした.また反転操作によってCADデータベースの座標系すなわち計測時座標系(=左手系)と加工機座標系(=右手系)とが鏡面対称となるため, 新たにY座標値にも正負変換を加えて鏡面体加工(ミラーイメージ)の発生を防いだ.工具は冠上面加工時と同一のボールエンドミルを使用し, 加工方法についても概形の円筒状加工の後に要求形状加工を行う多段階加工とした.アンダーカット部も冠外面の一部であるため, 工具オフセットに関しては咬合面部加工時と同一の考え方, すなわち冠表面の2本の接線ベクトルの外積を利用し, 表面よりも外側にオフセットを求めた.このように試料反転時の位置決め方法を確立することによって, X, Y, Z軸制御の3軸加工機を使用したクラウン外面加工に関し, 咬合面を中心とした冠上面の加工とアンダーカット部の加工との統合が図れ, 切削加工によって数値データからクラウン外面形態の再現が可能となった.さらに冠外面形態の上面の加工および支台歯の計測データを使用しての冠内面の加工との統合によってここに切削加工によるワックスクラウンの完成を見た.
  • 近藤 清一郎, 大川 昭治, 塙 隆夫, 菅原 敏, 太田 守
    1991 年10 巻5 号 p. 665-670
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    4種類の充〓填用セメントの破壊靱性が片側切欠き(SEN)試験片を用いて調べた.それらの破壊靱性の平面ひずみ破壊靱性としての妥当性と37℃の蒸留水中保管が破壊靱性に及ぼす影響を検討した.異なる厚さの試験片から得られたKc- B/(Kc/σt)2曲線は一定値に達せず, B/(Kc/σt)2は1.0〜4.0の範囲にあり, 破壊靱性が一定となる厚さを確定することはできなかった.SEN試験片(厚さB=5.0 mm, 幅W=5.0 mm, クラック長さa=W/2)から得られた破壊靱性の大部分はASTM E399に従う平面ひずみ破壊靱性とは判定できなかった.37℃の蒸留水中に30日間保管後の破壊靱性は平均して24時間試験片の75%程度に低下した.
  • 渡辺 功, 宝田 建二, 中林 宣男
    1991 年10 巻5 号 p. 671-677
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    象牙質へレジンを接着するうえで, 被着体である脱灰象牙質の物質透過性と接着剤を構成するモノマー自体の拡散力が重要である.象牙質内に拡散させたモノマーを確実に重合させると, 接着界面の象牙質側に樹脂含浸層が形成され, これの生成が高い接着強さを得るための重要な要素である.著者らは, 象牙質の物質透過性がモノマーの拡散速度に影響を与え, 接着強さや接着の耐久性に影響を与えることを知った.従来4-META/MMA-TBBレジンで6MPaの接着強さしか得られなかったリン酸処理象牙質に, HEMA処理を追加することにより接着強さが16MPaに向上し, 接着試料のSEM, TEM観察によりリン酸処理のみの場合に認められなかった樹脂含浸層の傾城が確認された.
  • 山崎 恭敬, 花岡 孝治, 宮国 敏, 篠塚 嘉昭, 松本 好史, 寺中 敏夫, 岩本 次男
    1991 年10 巻5 号 p. 678-683
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    修復された歯科材料は口腔内において繰り返し過酷な機械的および物理的ストレスを受ける.歯科材料の機械的特性を評価するためには, 静的試験法より動的試験法が望ましい.水中における疲労剪断接着強さを測定するために, 試作された繰り返し疲労試験機の性能と特性が検討された.本試験機の最大荷重(τmax)は320〜4, 020gf, 最小荷重(τmin)は200〜3, 220gfの範囲であった.実用限界負荷周波数は6Hzであった.10^6回疲労を与えた後でも安定した繰り返し荷重が得られた.これらの結果から, 本疲労試験機は耐久性を有し, 精密で信頼性があると結論される.
  • 岡田 周策, 鈴木 勝, 林辺 勝, 寺中 敏夫, 岩本 次男, 藤田 忠寛, 青木 英夫
    1991 年10 巻5 号 p. 684-691
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    CAD/CAMを応用した自動ミリング装置A-1を臼歯部コンポジットレジンの摩耗量測定に用いた.抜去小臼歯を選択して, 咬合面にI級窩洞を形成し, 窩洞に, 臼歯用コンポジットレジンを充〓し, 研磨した(ベースライン).シリコンラバーにて印象採得した後, ガラスビーズを用いたサンドブラスターにて人為的摩耗を施し, 摩耗後の試料として再び印象採得した.両印象とも銅にてメッキされ, 歯科用石膏を注入し, 計測用模型を作製した.2つの計測模型は, A-1にて計測され, 磁気ディスクにデータを保存した.データはコンピュータCRTおよびXYプロッターに出力表示され, 走査型電子顕微鏡像(SEM像)と比較した.このことより, 以下の結果を得た.1.A-1の測定精度は5μmであるが, 2μmまで向上させることが可能であった.2.摩耗は, 鮮明に観察されかつ二次元的に測定容易であった.3.A-1は, データをいかなる部位や倍率, そして, 求めたい切断像で観察できた.4.残る問題は, 計測速度の向上であるが, ベクトル処理を測定時のソフトウェアーに組み込むこで解決可能である.
  • 門磨 義則, 今井 庸二
    1991 年10 巻5 号 p. 692-698
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    チオバルビツル酸誘導体をジプロピルアミン塩酸塩(NPA), ジ-sec-ブチルアミン塩酸塩(SBA), ジ(2-エチルヘキシル)アミン塩酸塩(EHA)などのアミン塩酸塩と銅(II)アセチルアセトネート(CuAcAc)と組み合わせた常温重合開始剤システムの評価をトリエチレングリコールジメタクリレートモノマーを用いて行った.1, 3, 5-トリメチル-2-チオバルビツル酸(135MS)及び5-ブチルバルビツル酸(5B)は重合開始剤システムの還元剤として有効であったが, 他の誘導体ではあまり効果は認められなかった.135MS/EHA/CuAcAcの系は最も優れた重合開始能を示した.チオバルビツル酸誘導体が2, 2'-アゾビスイソブチロニトリルによるMMAの重合に及ぼす影響を検討した結果, 誘導期間が誘導体の種類により大きく変化しており, これらの化合物が重合反応に関与していることが示唆された.これらの影響は可視光線重合よりも常温重合において強く現れると考えられた.
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