歯科材料・器械
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原著
貴金属接着プライマーを用いた金属被着面処理法
鳥山 尚代若林 元加藤 丈晴今井 誠近藤 康弘山下 敦河島 光伸津軽 利紀小村 育男
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1991 年 10 巻 6 号 p. 739-747

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抄録
本研究は, 歯科用接着性レジンと歯科用合金との接着性を高める被着面処理材の開発を目的としている.0.5%10-Methacryloyloxydecanethiol(MDT)を含有した金属用プライマーを被着面処理材として用い, 接着性レジンと種々の純金属と4種の歯科用合金(金合金, 12%金銀パラジウム合金, パラジウム合金およびニッケルクロム合金)に対する接着強さを検討した.また, プライマーで純金属の表面を処理した後, X線光電子分析装置(ESCA)を用いて分析を行った.本プライマーを#600研磨した純金属に塗布して接着強さを測定したところ, 金, 銀およびパラジウムに対して280〜350kgf/cm2の高い接着強さが得られた.特に, 金と銀に対しては熱サイクリング試験後も安定した接着強さを示すことが分かった.ESCAで分析したところ金属プライマーに含有されているMDTの末端のSH基と金および銀との結合はプライマーをアセトンを用いて洗浄しても失われなかったことから強固な化学的結合であることがわかった.金属プライマーで処理した歯科用合金(金合金, 12%金銀パラジウム合金およびパラジウム合金)に対する接着強さを検討したところ, 37℃水中に24時間浸漬後に計測した初期値で450〜500kgf/cm2であった.しかし, 接着耐久性試験後ではパラジウム合金に対する接着強さは初期値の35〜40%まで低下した.これに対し, 金合金と12%金銀パラジウム合金に対する接着強さは初期値の80〜95%の高い接着強さを維持することがわかった.
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© 1991 一般社団法人 日本歯科理工学会
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