抄録
歯科用タイプIV金合金および12%金-パラジウム-銀合金は750℃で急冷軟化した後, 350℃付近で硬化熱処理を施すことにより実用に供されている.本研究は種々の熱処理条件と引張特性・疲労特性の関係を調べることにより, それぞれの合金の機械的性質を評価した.その結果, 750℃1時間溶体化処理した後, 400℃30分間時効を施した金合金および12%金-パラジウム-銀合金は引張強さはそれぞれ850MPaと860MPaを示し, 硬さも向上した.一方, 時効処理した両合金の疲労限は金合金の50MPaに対し, 12%金-パラジウム-銀合金を800〜850℃1時間溶体化処理した場合は, 引張強さおよび硬さは向上し, 800℃の溶体化処理では時効材に匹敵するかそれ以上の835MPa, 850℃では1, 080MPaにも達した.しかも疲労限は62.5MPaに向上し, この疲労限は同合金の時効材の35MPaの1.8倍に相当し, 金合金と同程度の性質を示した.これは800℃以上で溶体化処理することによって12%金-パラジウム-銀合金の伸びを極端に減少させずに引張強さを改善したためと思われる.