歯科材料・器械
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原著
歯科用金銀パラジウム合金の各種溶液中での腐食
市野瀬 志津子
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1992 年 11 巻 1 号 p. 149-168

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抄録
口腔内における歯科用金銀パラジウム合金の耐食性を改善するための基礎的情報を得るために歯科用市販金銀パラジウム合金を各種溶液中に浸漬し, 電気化学的測定, 表面状態の観察および成分元素の溶出量の測定を行った.その結果, 電気化学的腐食実験において腐食電位の値は人工唾液と耳下腺唾液で低く, 1%NaCl水溶液と1%乳酸溶液で高かった.アノード分極曲線の変化過程から, 腐食の進行は1%NaCl水溶液, 人工唾液, 1%乳酸溶液, 耳下腺唾液の順に速く, 同一溶液中ではas-cast試料, 硬化処理試料と時効析出試料で速く, 軟化処理試料と溶体化試料で遅れた.電気化学的腐食過程において1%NaCl水溶液, 人工唾液および耳下腺唾液に浸漬した試料の表面にはAgClが形成された.耳下腺唾液に浸漬したas-cast試料から溶出する元素別の溶出量は全体の90%がCuであった.耳下腺唾液に浸漬した試料から溶出するCuおよびAgの溶出量はas-cast試料と時効析出試料で多く, 軟化処理試料と溶体化試料で少なく, 熱処理に依存して変化した.耳下腺唾液に浸漬したas-cast試料から溶出するCuおよびAg溶出量の時間変化は単調な減少傾向であった.耳下腺唾液と血清に長期浸漬した試料表面には微細な針状結晶から成るHApが析出した.
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© 1992 一般社団法人 日本歯科理工学会
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