歯科材料・器械
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原著
細胞回復度試験法の確立に関する基礎的検討
-初期細胞数と細胞回復時間について-
松本 良造今井 弘一
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1993 年 12 巻 3 号 p. 374-392

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抄録
細胞死に至らない細胞障害を評価し得る細胞回復度試験法を確立するために, L-929細胞とHEp-2細胞の2種類の株細胞に対して, 温度変化(4, 40, 43, 46および49℃), 水素イオン濃度の変動(pH=3, 4, 5, 6)ならびに金属イオン(Ag, Pd, Cu)の3種類の細胞障害因子を作用させ, その際の初期細胞数, 作用時間ならびに細胞回復時間への影響をしらべた.温度変化の影響については, 40℃で最も軽微な細胞回復度への影響にとどまった.しかし, 4℃, 43℃, 46℃の順に作用時間が長いほど細胞回復度の著しい低下をきたし, 49℃ではほとんど細胞回復を認めないまでになった.以上の結果は4日間あるいは7日間の細胞回復時間, 4段階の初期細胞数(2×104, 5×103, 1×103, 3×102 cells/ml)あるいは両細胞種間に認められ, 互いに有意な差は認められなかった.水素イオン濃度の変動の影響については, pH=6ではほとんど認められず, pH=5では両細胞および4日間ならびに7日間の細胞回復時間とともに, 作用時間が長くなるにつれて, しかも初期細胞数が少ないほど細胞回復度が低下した.pH=3および4ではほとんど細胞回復が認められなかった.Agでは0.01 ppm以上でイオン濃度が上昇するにつれて, 作用時間が長いほど, しかも初期細胞数が少ないほど両細胞で細胞回復度が低下した.とくに5 ppmおよび10 ppmでは著しい低下であった.Pdでは0.5 ppm以上, Cuでは0.5 ppmあるいは1 ppm以上のイオン濃度で類似の結果であった.
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© 1993 一般社団法人 日本歯科理工学会
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